
ドイツ連邦軍は、ロシアの脅威に対抗し、北大西洋条約機構(NATO)の東側における最前線の防衛を強化するため、リトアニア共和国に新たな常駐部隊「第45装甲旅団(Panzerbrigade 45)」を創設した。これは、第二次世界大戦後、ドイツ連邦共和国が単独で外国に部隊を常駐させる初の事例となる。
2024年5月22日、ドイツ連邦軍はリトアニアの首都ヴィリニュスにおいて、新設された第45機甲旅団、通称「リトアニア旅団」の設置を正式に発表した。これは、戦後ドイツが旧ソ連地域に精鋭機械化部隊を駐留させる初の事例となる。
当該旅団は、陸軍第10装甲師団の隷下部隊として2025年4月1日に創設された。2025年5月時点において、約400名の将兵が既にリトアニア共和国に駐留しており、計画では2026年には約2,000名、2027年までに4,800名が駐留する予定である。ルドニンカイ訓練場にはドイツ連邦軍向けの宿泊施設、整備・保管施設、射撃場などが整備され、ドイツ軍兵士の家族向けにドイツ人幼稚園や学校の設置も計画されている。リトアニア政府はインフラ整備に約17億ユーロを投資予定であり、ドイツ連邦共和国側の一部費用負担についても協議が継続されている。
部隊編成

最前線に配備される旅団の第203戦車大隊には、レオパルト2シリーズの最新モデルであるレオパルト2A8戦車105両が配備される予定である。レオパルト2戦車はウクライナへA4型とA6型が供与されているが、ドイツ政府は比較的新しいA6型を供与しており、ポルトガルからの3両と合わせて21両が供与されている。しかしながら、少なくとも7両が破壊され、6両が損傷し、その内2両がロシア連邦軍に鹵獲されている。レオパルト2A6型の無人航空機(ドローン)に対する脆弱性が露呈したことを踏まえ、レオパルト2A8型ではイスラエル国ラファエル社製のアクティブ防護システム(APS)「TROPHY」が標準装備され、状況認識を向上させるために設計された一連のシステムも組み込んでいる。これは、全方向観測システムとオプションのレーザー光線放射警告システムを組み合わせることで、乗組員があらゆる方向からの脅威に対抗することを可能にする。また、リトアニア陸軍は初の戦車大隊の創設を決定しており、レオパルド2A8戦車44両を購入する契約をドイツ連邦共和国と締結した。ドイツ連邦軍による訓練と相互運用が期待される。
その他、旅団に編成された第122機甲歩兵大隊にはプーマ歩兵戦闘車、第455砲兵大隊にはPzH 2000 155mm自走榴弾砲などが含まれる。今後編成予定の第456補給大隊、第45偵察中隊、第45装甲工兵中隊、第45通信中隊などの支援部隊には、フェネック偵察車、ボクサー装甲兵員輸送車、移動式防空システムなどの支援装備も装備される予定である。さらに、現在リトアニアに展開しているドイツ連邦共和国主導のNATO拡張前方プレゼンス(eFP)部隊も、2026年2月にこの旅団に統合される予定である。
この常駐旅団の創設は、2022年のロシア連邦によるウクライナ侵攻を受けてドイツ連邦共和国が打ち出した安全保障政策の転換「ツァイテンヴェンデ(Zeitenwende)」の一環であり、NATOの東側防衛強化に対するドイツ連邦共和国の具体的な貢献を示すものである。フリードリヒ・メルツ首相は、リトアニアにおける式典において「ヴィリニュスを守ることはベルリンを守ること」と述べ、NATOの団結とロシア連邦への抑止力強化の重要性を強調した。ヴィリニュスはロシア連邦の衛星国であるベラルーシ共和国の首都ミンスクからわずか150km、モスクワからも800km足らずの距離にあり、ロシア連邦とベラルーシ共和国から大きな懸念を引き起こしている。リトアニア共和国へのドイツ連邦軍の常駐は、ドイツ連邦共和国の防衛政策における歴史的な転換点であり、NATOの東側防衛体制の強化に大きく寄与するものとされ、今後の展開とその影響が注目されている。