
アメリカの軍需企業大手Textron Inc.の子会社、Textron Systems Corporationは、対車両地形形成システムである「XM204」トップアタック弾が、アメリカ陸軍が主導する初期製品試験を滞りなく完了した旨を発表した。XM204は、戦車の防御が脆弱な砲塔上部を攻撃する次世代型の対戦車地雷として位置づけられる。
Textron Systems’ XM204 Successfully Completes U.S. Army First Article Testing
テキストロン・システムズ社は4月29日、アリゾナ州ユマ試験場にて実施された低率初期生産(LRIP)契約に基づく米陸軍主導のXM204トップアタック弾の初期試験が成功裡に完了した旨を発表した。この重要な節目は、当該システムがアメリカ陸軍及びその同盟国への生産・納入準備が整ったことを実証するものであり、量産体制への移行が承認された。ウェポンシステム担当上級副社長ヘンリー・フィネラル氏は、「今回の初回製品試験の成功により、XM204の重要な機能を速やかに戦闘員へ提供することが可能となりました。この対車両兵器は、主要地点に障害物を設置することで地形を戦略的に活用し、敵の車両部隊の進撃を遅延または阻止することができます。これは、国境紛争地域や友軍防衛といった国際的なニーズに応える対機動任務において、画期的な能力を発揮するものと確信しております」と述べている。
XM204トップアタック弾
XM204は、スタンドオフ攻撃及び上空攻撃能力を具備する対車両兵器であり、敵部隊の阻止、撹乱、方向転換といった機動阻止任務を支援し、TSO作戦を支援するよう設計されている。TSOとは「Terrain-Shaping Obstacle」の略称であり、日本語に直訳すると「地形を形成する障害物」を意味し、敵部隊の移動、機動、進入を制限、遅延、誘導するため、戦場の地形に人為的に設置される障害物を指す。
XM204は、地上設置型の対戦車地雷であり、地震、音響、レーダーセンサーを統合し、敵車両の接近を自動検知・追跡し、破壊する能力を有する。本システムは、センサー一式と4発の弾薬で構成され、敵装甲車両の移動経路と推定される地点に配置される。センサーの検知範囲は約50mに及び、敵車両から発生する振動、音響、熱源を検知する。検知後、XM204自体は起爆せず、搭載された弾薬が数十mの高さまで射出され、ブースターロケットの作動により標的に合わせて発射角度が調整される。上空にて成形炸薬弾が発射され、装甲車両の上部を攻撃する。特に装甲の脆弱な車両上部や後部エンジンブロックを攻撃し、車両システムの機能を麻痺させ、乗員を無力化する。現代的な車両には、上部に各種センサーが搭載されており、これらセンサーを無効化することも可能である。XM204の重量は約38kgであり、歩兵2名による運搬および操作が想定されている。駆動時間の設定が可能であり、設定時間を超過すると自動的に無力化され、未爆発弾のリスクを低減する。検知範囲が広範であるため、味方車両や民間車両への攻撃が懸念されるが、近年のスマート地雷に搭載される音響・振動センサーは、予め指定されたパラメーターに合致する車両のみを対象とするよう設計されており、味方車両や民間車両を識別できる。XM204に同様の機能が搭載されているかは、現時点では明確にされていない。
一般的に対戦車地雷は地中に埋設され、上方を通過する車両の接触ないし加圧などの作用によって爆発し、下方から車両に甚大な損害を与え、走行不能に陥らせ、乗員を殺傷する。しかしながら、2000年代以降、IED(即席爆破装置)による奇襲攻撃が多発する傾向にあり、近年の戦闘装甲車は対地雷防御が強化され、耐地雷・伏撃防護車両の数が増加した結果、従来の対戦車地雷では致命的な打撃を与えることが困難となっている。XM204は、これらの耐地雷・伏撃防護車両に対して致命的な打撃を与える目的で開発された。トップアタックが可能な対戦車地雷においてはロシアが先行しており、トップアタックが可能な対戦車地雷PTKM-1Rをウクライナにおいて使用していることが確認されている。