米海兵隊、廃止されたM10ブッカーの受け入れを検討

US Army

アメリカ陸軍がM10ブッカー装甲戦闘車の廃止を決定したことに対し、海兵隊偵察大隊の司令官が不要になった車両の導入を提唱しています。

The Army doesn’t want the M10 Booker. Do the Marines need it?

Task and Purposeの報道によれば、米海兵隊第3軽装甲偵察大隊(3D LAR BN)の指揮官ジョン・ディック中佐と副官ダニエル・D・フィリップス中佐は、M10ブッカーに関する独自の見解を表明しました。両氏は論説において、海兵隊、特に軽装甲偵察(LAR)大隊が陸軍の余剰となったブッカーを運用すべきであると主張しています。

海兵隊は、将来の準対等敵国間紛争に備えた戦力再編計画「Force Design 2030(FD2030)」の中で、将来の戦争計画において戦車は不要であるとの判断に基づき、既に戦車大隊を廃止しています。しかしながら、機械化偵察部隊には、これを補う火力と装甲を持つ車両が現状不足しています。現在開発中の次世代高度偵察車(Advanced Reconnaissance Vehicle:ARV)の配備には数年を要する可能性があり、LARには老朽化した水陸両用軽装甲車両(LAV)のLAV-25、および高機動性しか利点がない非装甲の超軽量戦術車両ULTVぐらいしかありません。LAV-25の25mm砲では主力戦車やBMP-3といった歩兵戦闘車への効果は限定的で、対戦車ミサイルも搭載できません。対戦車兵器に対する防御力が皆無であり、地雷・IEDに対しても脆弱。偵察・軽戦闘には適していますが、敵主力装甲部隊との交戦には向いていません。

米海兵隊の軽装甲偵察大隊は、迅速かつ高機動な偵察・監視任務を主目的としつつ、火力支援により戦闘前線を支援・突破する役割を担っています。海兵隊の「目」として、敵情把握、接触回避、情報収集、前方のクリアランスを行う専門部隊ですが、両将校は、現在の装備ではその役割を果たす上で火力と防御力が不足していると考えています。M10ブッカーは105mm戦車砲を搭載し、敵の軽装甲車両や火力拠点の制圧任務に特化しています。

両将校は、M10ブッカーを4つの軽装甲偵察大隊に編入することで、ARVが配備されるまでの間、大隊の火力と生存性の不足が解消されると主張しています。また、「海兵隊は長年にわたり陸軍からの”残り物”を引き継ぐことで知られており、比較的少ない初期費用で所有権を獲得できる」と述べています。M10ブッカーは陸軍予算により既に80両が生産されており、これを安価に入手することが可能です。

しかしながら、これはあくまでARV導入までの暫定的な案であり、米海兵隊が中長期的にM10ブッカーを運用することはないと推測されます。M10は重量約40トンであり、海兵隊の空輸・海上展開には不適合です。海兵隊は機動戦を重視し、エアモビリティ(CH-53やC-130による輸送能力)を重視しています。しかし、M10はC-130輸送機での空輸が不可能であり、2両の搭載が計画されていたC-17輸送機でも1両しか搭載できません。さらに、40トンを超える重量のため空中投下も不可能であることから、陸軍が計画を廃止した経緯があります。米海兵隊の海上輸送および離島上陸において重要なエアクッション型揚陸艇LCACにおいても、1両しか搭載できず、重量・スペース制限が厳しいため、他の貨物や人員の併載は困難とされています。

しかし、両司令官は、この提案が支持を得られれば、一石二鳥の効果があると述べています。第一に、軽装甲偵察部隊は効果的な追加火力を得ることができ、第二に、海兵隊は再び陸軍のお下がりを受け取ることに対する不満を表明できるようになるでしょう。また、実運用されることが、再評価される可能性もあります。

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