西側の自走砲は質はいいが、強度の高い戦場には適しておらず、稼働率が低下

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ウクライナに供与されている西側製の155mm自走榴弾砲。長い射程に精度の高い砲撃でロシア軍を苦しめていますが、砲撃の応酬となっているウクライナの戦場では射撃頻度が想定を上回っており、砲身が摩耗、パーツ不足に陥っており、稼働率が低下している。

ドイツメディアのビルトが9日、関係者の話として報じたところによると、ドイツ、イタリア、オランダがウクライナに供給している155mm自走榴弾砲のほとんどが砲身の磨耗や部品不足で使用不能になっている。ウクライナ軍は、西側の自走砲は技術的には進んでいるものの、ロシア軍との激しい砲撃の応酬には適していないと述べた。そのため、多くの自走砲が現状、長い間使用できなくなっている。あるウクライナ軍兵士は「これは優れたシステムだが、砲身の磨耗は非常に深刻だ。一定期間使用した後、交換する必要があると報告した」と語った。砲身の問題は自走砲の供与が始まった2022年には存在していたが、2年経った今も状況は改善されていない。ウクライナではNATOが想定していた3~4倍の強度で砲撃が行われており、部品の生産と供給が追い付いていない。冷戦後のNATOは第一次大戦・第二次大戦時のような砲撃の応酬が現代の戦争で起きるとは想定していなく、砲撃頻度よりも長射程と精密さに重点を置いていた。

ドイツのラインメタルがウクライナに開発中の射程100km砲弾を提供
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特に深刻なのがドイツが生産元のPzh2000 155mm自走榴弾砲だ。Pzh2000はこれまでドイツが14両、オランダが8両の計22両が供与されており、ドイツは2024年から2025年にかけて、追加で12両を供給すると発表している。Pzh2000は欧州で最も売れている自走榴弾砲で、クロアチア、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、リトアニアも配備している。砲身にはラインメタル社製の52口径L52 155mmを搭載。メーカー発表では4500発の発射まで耐えられるとされるが、供与から1年で2万発以上を発射した事が確認されており、これまで5万発以上を既に発射したことが推測される。単純に考えれば11両の砲身が既に限界を迎えている。更にウクライナに供与されたのは新品ではなく、中古だ。Pzh2000は1998年からドイツ連邦軍に配備されており、砲身寿命は更に短くなっていただろう。幸いPzh2000の破壊報告はまだないが、使用できないのであれば同じだ。

砲身の量産はそう簡単ではない。発射時に強力な圧力がかかる砲身は高級鋼を使った特殊な機械で作られる。その機械は多大な投資と製造期間が必要でそう簡単に増やすことはできない。ラインメタルは今年5月、Pzh2000向けに100本以上のL52砲身を供給することを委託されたと発表しているが納入は2024年から2029年の6年にまたいで行われる。つまり、年間17本ほどだけだ。全てウクライナ向けであれば、問題は解決されるが、先ほども述べたように採用国は他にもいる。またL52はPzh2000向けだけに作ればいいわけでは無い、同じくドイツのRCH155、アメリカのM109A6パラディンやスウェーデンのアーチャーでも使用されているので、生産枠を全てPzh2000向けにするわけにもいかない。しかも、この3つもウクライナに供与されている。つまり、砲身不足は更に拡大する懸念がある。現在、NATOは砲弾の生産体制を強化し、月産10万発以上を生産。かつての砲弾不足から、安定的にウクライナに砲弾を供給できるようになった。しかし、今度は逆に砲弾を発射する側が不足する可能性があると言う事になる。

しかし、砲身不足はウクライナだけでの問題ではなく、ロシア側でも起きている。ただ、ロシアの場合は旧式の砲システムが大量に倉庫に眠っており、その砲身を再利用している。ロシアは砲撃の精度にあまり拘っておらず、圧倒的な火力で面制圧ができればよい。西側の兵器はそういうわけにはいかない。二次被害を懸念し、精密さを重要視する。

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