トルコの防衛産業界から、革新的な対ドローン戦車「ALKA-KAPLAN」が発表されました。これは、防衛企業のFNSS社とROKETSAN社が共同で開発した指向性エネルギー兵器搭載型システムであり、来る7月22日からイスタンブールで開催される国際防衛展示会「IDEF2025」でその全貌が初めて公開される予定です。
ALKA-KAPLANの概要
この画期的なシステムは、ミサイルおよびロケット兵器の専門企業であるROKETSAN社と、トルコの装甲車両製造大手FNSS社の協力によって誕生しました。FNSS社は先進的な「KAPLAN HYBRID Vehicle(カプラン・ハイブリッド車両)」を、ROKETSAN社は「ALKA DEWS(アルカ・デュース)」と呼ばれる指向性運動エネルギー兵器システムを提供し、それぞれの頭文字をとって「ALKA-KAPLAN」と命名されました。これは、現代の戦場における新たな脅威に対応するための統合ソリューションとして位置づけられています。
ALKA DEWS:多層防御システム
ROKETSAN社が開発したALKA DEWSは、その名の通り、二層にわたる堅牢な防御システムを提供します。
- ソフトキル能力(電磁妨害システム:EMS): 敵の無人航空機(UAV)やドローンが接近する前に、電磁妨害によってその機能を無力化します。これは、敵のシステムを物理的に破壊することなく、その脅威を排除する「ソフトキル」アプローチとして機能します。
- ハードキル能力(高エネルギーレーザー兵器:LS): EMSによる無力化が困難な、あるいはより即座な排除が必要な脅威に対しては、高エネルギーレーザー兵器を用いて標的を物理的に破壊します。
このシステムは、搭載された回転レーダーによって、固定翼および回転翼UAV、スウォームドローン、徘徊型兵器などを広範囲にわたって検知することが可能です。これらの脅威が有効射程範囲に到達する前に、ソフトキルまたはハードキル方式のいずれかで迎撃することで、防衛ラインの突破を許しません。さらに、ALKA DEWSは、路肩に設置されたIED(簡易爆発装置)、爆弾トラップ、不発弾の無力化にも使用できるため、対テロ作戦や不発弾処理における兵士の安全確保にも貢献します。
ALKAは単なる単一の兵器システムに留まらず、統合されたシステムソリューションとして設計されています。複数のALKAシステムを組み合わせることで、広範囲にわたるエリアの防空を可能にする「面」での防御を構築できます。ネットワーク対応の構造、AI支援による目標検知機能、そして精密なレーザー誘導機能、さらに電気光学システムを備えたこのシステムは、近代的な防衛戦における最初の、そして最も重要な防衛段階を形成するものです。
KAPLAN HYBRID Vehicle:ALKA DEWSを支える革新的なプラットフォーム
FNSS社によって開発されたKAPLAN HYBRID Vehicleは、単なる移動プラットフォーム以上の役割を担っています。
- 高効率な電力供給システム: この車両は、ALKA DEWSの膨大なエネルギー需要を満たすために、800ボルトの電気インフラを搭載しています。高キロワットのディーゼル発電機が内蔵されており、追加の動力装置を必要とせずにALKA DEWSに必要な電力を安定して供給します。
- 革新的な駆動システム: 発電機は、車両の駆動システムにも電力を供給します。これにより、静かな走行、航続距離の延長、そして高トルクによる急加速が可能となり、戦場での高い機動性を実現します。
- ステルス性と監視能力: バッテリーシステムは、運用シナリオにおいて静粛な走行を可能にするだけでなく、最大24時間にわたり熱痕跡を残さずに監視活動を行うことができます。これにより、車両は戦場で求められる高い機動性と、敵に探知されにくいステルス性を両立しています。
- 高い適応性と将来性: 最大重量20トンまでの装軌車両向けに開発されたこのプラットフォームは、ユーザーのニーズに応じて、新規の装軌車両開発プログラムや既存車両の近代化プログラムに柔軟に適応可能です。近い将来には、サイズ調整を行い、最大40トンまでの様々な重量の装軌車両にも適用される予定であり、その汎用性と拡張性が期待されています。
ALKA-KAPLANは、現代の戦場における多様な脅威、特にドローンや自爆型兵器の拡散に対応するための、トルコの防衛産業の最新の成果を示すものです。指向性エネルギー兵器と高性能ハイブリッド車両の組み合わせは、将来の防衛システムの新たな方向性を示唆しており、IDEF2025での公開は、国際社会からの大きな注目を集めることでしょう。