地雷除去車両のUR-77メテオライト。ロシア・ウクライナ戦争では両軍で使用されている車両ですが、両軍ともにこの車両を本来の目的とは異なる形で使用しています。
UR-77メテオライトとは
UR-77 Meteoritは、ソ連によって1970年代に開発された地雷除去車両です。2S1 Gvozdika自走砲のシャーシに地雷を破壊するための2本のロープ状の爆導索を射出するランチャーを搭載。射出した爆導索を地面に敷くとワイヤーを通して送られる電気パルスによって起爆。衝撃波は地雷の信管に圧力を与え、幅6m、長さ90mのラインに沿って埋設されている地雷や砲弾を起爆させ無力化。味方の戦車や戦闘車両が通過できるよう地雷原に切れ目を入れます。乗員は2人で再装填には30~40分かかります。
ロシアは攻撃兵器として使用
UR-77は上の説明のように攻撃部隊の活路を開く、いわゆる支援車両です。しかし、ロシア軍はこれを攻撃車両として使用してきました。それが最初に見られたのが、1999年の第二次チェチェン紛争とされます。大規模な市街地戦が行われた同紛争では、建物に潜む戦闘員にロシア軍は苦戦。これらを一掃するために、UR-77を投入。集落に向けて1トンの爆薬を抱える爆導索を発射、強力な爆風で建物もろとも敵を一掃しました。アサド政権を支援する形で参戦したシリア紛争でも市街地戦にUR-77を投入。爆導索で通り全体を破壊、付近の敵勢力を一掃します。爆導索は広範囲を一度に攻撃できるので、戦車や砲撃の攻撃よりも理に適っています。また、チェチェンもシリアも敵は基本、歩兵主体の非装甲部隊であり、UR-77の爆導索の威力で十分な効果を発揮します。
ウクライナでも攻撃兵器として利用
チェチェン、シリアでの戦果もあって、ロシアはウクライナでもUR-77を攻撃兵器として活用。市街地戦に投入し、建物を破壊するために使用しました。しかし、相手はこれまでと違い、西側の支援を受ける正規軍です。UR-77はもともと前線に出ることを想定していないので装甲が貧弱で、前に出れば危険です。目の前の地雷除去を目的としているため、通常は数十m先までしか爆導索を飛ばしませんが、映像を見る限り、かなり遠くまで飛ばしているのがわかります。爆薬の量を半分の500kgにすれば、最大700m先まで飛ばすことが可能のようです。
ウクライナ軍も利用
ロシアは世界No2の兵器輸出大国ですが、UR-77はほとんど海外に輸出されていません。旧ソ連で戦車の製造を担っていたウクライナもロシアの侵攻前、UR-77は保有していませんでした。しかし、ウクライナは現在、少なくとも16両以上のUR-77を所有しています。これらは全てロシア軍から鹵獲したものです。ウクライナ軍はこれを活用しており、本来の地雷除去任務はもちろん、ロシア軍と同様に攻撃兵器としても利用しています。