イギリス国防大臣のベン・ウォレスは英国のBAESystemsとドイツのRheinmetallAGとの合併企業で軍用車メーカーのRheinmetall BAE Systems Land(RBSL)と8億ポンド(1226億円)相当の契約を結び、同国の主力戦車チャレンジャー2(Challenger2)を「チャレンジャー3(Challenger3)」にグレードアップすることを発表した。148輌の改修を予定しており、車両は英国内のシュロップシャー州テルフォードのRBSL工場で生産される。
老朽化していたチャレンジャー2
現在の英陸軍の主力戦車(MBT)はイギリスのヴィッカース・ディフェンス・システムズ(現:BAEシステムズ)によって開発された第三世代戦車のチャレンジャー2戦車になる。1994年7月に初めて納入され、2002年までに408輌が英陸軍に納入されている。古いもので30年近く、もっとも新しい車両でも約20年を経ているが、実はこの間に目だった近代化改修は行われていない。対照的にドイツの「レオパルト2」は1979年に登場とチャレンジャー2よりも15年早く投入されているが、その後、7度のメジャーバージョンアップを行い最新モデルの「レオパルト2A7」の性能はチャレンジャー2を大きく凌ぎ、NATOの多くの国に採用されている。
各国が主力戦車を第3.5世代、第4世代に移行するなか、チャレンジャー2は第3世代戦車と比べても能力が劣るとされており、特に最大速度56km/hは他のMBTが平均70km/h前後なのと比べる鈍足で、致命的な欠点を抱えている。更に120mm滑空砲が主流の今、チャレンジャー2の主砲は120mmライフル砲になる。既に砲弾の生産は終わっている上にNATO加盟国間での互換性がない。その他、夜間戦闘能力、射撃管制システムなど全てにおいて能力が劣っている。唯一ましなのは装甲を含めた防御力ぐらいだ。過去には何度か、バージョンアップの計画は上がっていた。しかし、予算上の都合で中止、または先延ばしになっていた。その間、国産は止めてレオパルト2の購入案や、それこそ、最近では島国で侵略の恐れがないイギリスに戦車は必要ないという戦車不要論まで上がっていたが、これは国防省が否定した。そんな状況が長く続いていたが、ようやく英国防省も重い腰を上げたようだ。
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チャレンジャー3の改修内容
報道によると、チャレンジャー3には高速弾薬を発射でき、NATO軍と互換性がある120mm滑腔砲(L/55A1)に切り替わる。同時により大きな馬力のエンジン、新しい冷却システム、サスペンションシステムを装備して、移動中の射撃の精度を向上させると共にチャレンジャー3の最高速度95km/hに達し、航続距離もアップする。その他のアップグレードとして、射撃管制システムの改善では自動ターゲット検出追跡システムが追加され脅威をすばやく特定する。新しいサーマルディスプレイリモートカメラにより昼夜関係なく能力を発揮でき、夜間の戦闘能力は格段にアップする。データーリンクによりヘリや他の地上部隊とリアルタイムで戦場の情報を共有できるようになる。防御力に関しても装甲のアップグレード、アクティブ保護システムも追加される。
現在、227輌のチャレンジャー2があるが、改修されるのは148輌のみになり、79輌は削減される。2027年までに最初のチャレンジャー3戦車を受け取り、2030年までに完納される予定だ。また、これにより、チャレンジャー戦車の運用寿命は2040年まで延長される。
Source
https://www.army.mod.uk/news-and-events/news/2021/05/challenger-3-upgrade/
https://www.bbc.com/news/uk-england-shropshire-57025266