イギリスのチャレンジャー2戦車の装甲は前モデルのチャレジャー1を通して、一度も破られたことがないことで有名で、その装甲技術は軍事機密です。しかし、今回、ウクライナに提供が決まったことで、万が一にでもロシア軍に車両が鹵獲された場合、装甲への対抗手段を練られたり、装甲技術を模倣されることを危惧しています。そこでイギリス国防省はいくつかの対策を講じています。
チャンレンジャー2の装甲
Ukrainian tank crews have now arrived in the UK to undergo training on the Challenger 2 tank.
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) January 31, 2023
The UK is providing tanks to Ukraine to help them retake territory and repel enemy forces.
🎬 Here’s archive video of the Challenger 2 in action. pic.twitter.com/LOGHZpeDRf
チャレンジャー2の砲塔と車体はチョバムアーマーと呼ばれる装甲で保護されています。詳細については機密扱いですが、セラミック、鋼、および衝撃吸収化合物で作られた複合装甲とされ、その強度は均質圧延鋼装甲(RHA)の二倍の質量効率を持つとされています。実際、2003年のイラク戦争で、1両のチャレンジャー2が近距離から計14発のRPG対戦車ロケットランチャーと対戦車ミサイルMILANの攻撃を受けるも乗員は無事で、大破することなく、その後修理され、6時間後には戦線に復帰。2006年にはRPG-29のタンデム弾によって正面装甲を貫通されながらも、2.4kmを走行して基地まで帰還。ドライバーは両足を切断する重傷を負いましたが、4人の乗員に死者はいませんでした。また、T-55の105mm砲では表面が焦げ付くほどで損傷を与える事ができないことも実証されています。そんな、高度な装甲技術をロシアの手に渡せることはなんとしても防ぎたいわけです。
最前線に配備するな
#Ukraine: The Ukrainian 92nd Mechanized Brigade destroyed a Russian T-80BV tank in #Luhansk Oblast. pic.twitter.com/msv3ryGiU7
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) February 7, 2023
イギリスはウクライナに対し、チャレンジャー2を戦線が突破される危険性がある戦線に投入しないように言っています。それはつまり、東部の最前線に配備するなということです。戦線が突破されれば、混乱で計画だった撤退が難しくなり、仮に車両が破壊ないしは故障すればその場に放棄しなければならない事態がありえます。押し込まれている戦線ではその後の回収も難しいでしょう。
回収車両と要員の配備
イギリスは仮にチャレンジャー2が破壊ないしは動けない状態になったとしても、車両を回収できるよう戦車回収車両の提供と、回収のための要員の訓練も行います。その他、チャレンジャー2の修理が可能な民間軍事会社の要員も待機させることを計画しているとされます。つまり、とにかく、車両は破壊されても、その場に放棄せず、なんとしても回収せよというのがイギリスのスタンスです。
とはいえ、チャレンジャー2が前線に配備される可能性は低いかもしれません。チャレンジャー2の主砲は120mmライフル砲とレオパルト2、エイブラムスが搭載するNATO規格の120mm滑腔砲と異なります。そのため、砲弾が共有化できないと兵站上のデメリットに加え、車両自体も今のところ提供数は14両のみと100両規模のレオパルト2、31両のエイブラムスと比べ少ないので、キーウやハリキウと拠点防衛に配備されるのではと推測されています。東部の最前線は100両以上が提供予定のレオパルト2が、南部はエイブラムス担うのではとされています。