NATO各国はウクライナへの支援として多くの重火器を提供。チェコとポーランドはウクライナ軍も扱いになれたソ連時代の戦車T-72を数多く提供しました。しかし、これらの支援により、両国の戦車戦力は大きく弱体化。ロシアの脅威が無くなっていない現在、その補填は必要であり、両国は代わりの戦車を探し、補充しています。
チェコはドイツからレオパルト2A4を取得
旧東側のチェコの主力戦車は1971年にソ連で開発されたT-72戦車になり、ロシアのウクライナ侵攻前まで戦車の保有数は国産のT-72M1が46両、それを独自に近代化改修を行ったT-72M4CZを30両の計76両を保有していました。この内、約40両のT-72M1戦車をウクライナに送ったとされます。ウクライナに送る前までT-72M1の稼働数は20両だったので、戦車20両の即応戦力を失ったことになります。これを補填すべく、チェコはドイツからレオパルト2A4戦車15両を譲り受けることを5月中旬に合意。半年以内にチェコ軍への納入が始まる予定です。チェコ軍にとってはソ連・ロシア系以外の戦車としては初になります。レオパルト2戦車の改良版として1985年に開発されたレオパルト2A4はT-72M1戦車よりも近代的で、NATO基準の120mm滑腔砲を搭載しています。
ドイツレベル 1/72 ドイツ陸軍 SLT50-3 エレファント & レオパルド2A4
ポーランドはレオパルト2A7、若しくは韓国のK2を検討
ポーランドはなんと232両ものT-72戦車をウクライナに送りました。これはドイツ軍（236）の戦車保有数に匹敵する数です。それができたのはポーランドが老朽化したT-72に代わる戦車としてアメリカのエイブラムスM1A2の最新バージョンSEPv3、250両を購入する契約をアメリカと結んでいるからです。早ければ2022年後半から納入が始まります。しかし、全数の納入が完了するのは2026年と4年後。まだちょっと先です。ポーランドはロシアの飛び地カリーニングラード、ロシアの同盟国ベラルーシ、そしてウクライナと国境を面するNATOの要衝であり、ロシアの脅威が高まった現在、戦力維持は不可欠であり、むしろ増強が必要です。そこで、失った戦車戦力の補填をすべく、新たな戦車の調達に動いています。まず候補に挙がっているのが、ドイツのレオパルト2A7です。ポーランドはこれまで250両以上のレオパルト2A4と2A5をドイツから受け取っており、レオパルト2A7の運用も問題ありません。しかし、前述で述べたたようにドイツは既にチェコに14両のレオパルド2A4を譲ることを決定。更にポーランドへともなるとドイツの戦車戦力が大幅に削減されます。ウクライナ侵攻が始まるまでドイツは軍縮を進めており、戦車の稼働数も僅か数十両とされていました、しかし、ロシアの脅威が差し迫った状況になったことで軍事予算を増額するなど、軍備増強に動いています。
もう一つの選択肢は韓国のK2ブラックパンサー戦車です。韓国は過去、ポーランド国防省の戦車近代化要件に沿った「K2PL」を設計し、ポーランド国内での共同生産を提案していました。K2はレオパルド2と同じドイツ製のラインメタル120mm/L55滑腔砲、パワーパックにMTU社のディーゼルエンジン、RENK社のギアボックスなどレオパルド2と同じにできるので、整備や兵站のコストはレオパルド2A4を採用するのとさほど変わらないとられます。ポーランドがエイブラムスM1A2を選択したことでK2PLの計画は無くなったと思われましたが、韓国と生産元の現代ロテムにはまたチャンスが巡ってきたことになります。ただこれから工場の設置、生産となると長い時間がかかります。
ロシアによりウクライナの侵攻は東ヨーロッパの戦車編成図を大きく書き換えることになるかもしれません。
Source