フランスがウクライナにルクレール戦車の提供を検討、イギリスに続くか

フランスがウクライナにルクレール戦車の提供を検討、イギリスに続くか
Photo Armée de Terre

フランスのマクロン大統領が同国の主力戦車であるルクレール(Leclerc)のウクライナへの提供を検討するよう指示したと報じられました。トップからの指示とあれば、実現される可能性は高く、イギリスに続く2カ国目の主力戦車の提供になり、NATO標準規格の主砲を搭載した、初の主力戦車提供になります。

フランスは先日、105mm砲を搭載するAMX-10装輪式偵察戦闘車のウクライナへの発表したばかりですが、イギリスが主力戦車のチャレンジャー2の提供を発表したこともあり、自国の主力戦車であるルクレールの提供の検討を始めたと複数のメディアが報じています。この検討は同国トップであるマクロン大統領の指示のもと行われており、詳細な情報を提供するよう軍事省に求めています。とはいえ、現段階では情報収集の段階であり、提供するか否かは軍事省、兵器総局(DGA)、そして、開発生産する同国の防衛企業ネクスターからの情報と分析、回答次第であり、フランス議会の承認も必要です。

ルクレール戦車とは

フランス軍主力戦車ルクレールのアップグレード版「ルクレールXLR」
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ルクレールMBTはフランスの会社Nexter Systemsによって設計、開発、製造された第3世代の主力戦車です。1991年に量産が始まり、1992年にフランス軍に就役。フランス軍以外では、アラブ首長国連邦、ヨルダンで運用され、約800両が生産、フランスには406両が納入、残りの約半数がアラブ首長国連邦に、80両がヨルダンに納入されています。主砲にはNATO基準の52口径GIAT CN120-26 120mm滑腔砲を搭載、設計上は140mm砲も搭載可能です。NATO軍の主力戦車であるアメリカのエイブラムス、ドイツのレオパルド2に自動装填装置が搭載されていない中、ルクレールには搭載されています、そのため乗員は車長、操縦士、砲手の3人のみです。自動装填装置の弾倉には22発、予備弾の18発と合わせ計40発の砲弾を搭載。副武装に12.7mm同軸機銃、7.62mm対空機銃を装備。装甲はモジュール化された複合装甲で、追加も可能。Galix戦闘車両防護システムは赤外線を遮断する発煙弾、対誘導弾ミサイル用のフレア、対歩兵用の近接擲弾を発射し、 生存性を高めています。1500馬力のSACM V8X-1500 8気筒ハイパーバーディーゼルエンジンを搭載。整地を最大速度73km/hで走行します。追加の燃料タンクを装備した状態の走行距離は550kmです。エイブラムス、レオパルト2が重量化していく中、ルクレールは比較して7トンほど軽くなっています。

200両の在庫を抱えている

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2000年代初頭までにフランス陸軍に納入されたルクレール戦車406両の内、実はアクティブなのは、その約半数の200両ほどです。残りの200両は保管状態にあります。そして、稼働中の車両は「ルクレールXLR」という名で近代化改修されます。新しい戦闘情報システムによるデータリンク機能、新しい射撃管制システムは静止または移動状態で標的を攻撃でき、新しい120mm弾薬の使用を可能にします。砲塔には12.7mm機銃を搭載したベルギーのFN Herstal社製の新しい武器ステーション(RWS)が装備されます。装甲は強化され、側面に装甲版が追加され前面の爆発反応装甲は改良、エンジンルームにはRPGから保護するために格子スクリーンなど新しい装甲パッケージが追加されるなど、機能は大幅にアップグレードされます。2024年までに50両、2028年までに150両がフランス陸軍に納入される予定です。保管されている200両はアップグレードされません。

つまり、この余剰在庫からであれば、ウクライナに提供してもフランス軍の戦力に影響はないと考えてしまうのですが、そう安易に提供できない事情があります。ルクレールは既に生産を終了、生産ラインも閉じており、次世代戦車であるMGCSがドイツと共に共同開発が始まっています。ルクレールXLRはそれまでのつなぎなのですが、MGCSの運用は2040年頃予定とまだ15年以上先です。実は保管されている200両は運用中のルクレールの部品どり用という目的でもあります。なので、保管車両を提供すると、今後のルクレールXLRの運用に影響をきたす可能性があります。そういった事情もあり、慎重であり、提供できたとしても、少数に限られるかもしれません。イギリスがチャレンジャー2を14両提供するので、同数規模、少なくとも三小隊、一中隊規模の12両の提供はあるかもしれません。

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