K2戦車の生産ラインは韓国軍向けよりもポーランド軍を優先

NATO

韓国のK2ブラックパンサー戦車の生産ラインは現在、フル稼働の状態にあり、そのほとんどがポーランド軍向けの車両で占められています。韓国軍向けの車両生産は後回しにされており、その背景には、ポーランドからの大規模な発注と、韓国政府による兵器輸出促進政策があります。

ポーランドは2022年にK2戦車の最大1,000両導入枠を設定し、その第一段階として180両(韓国製117両、ポーランド国内ライセンス生産63両)を発注しました。K2の生産元である現代ロテムは、2025年3月までに110両のK2をポーランドに納品しており、第一段階の韓国生産分は完了に近い状態です。

さらに、2025年6月には約60億ドル相当の第二バッチ180両の追加契約が最終合意に至りました。この第二バッチの内訳も、約117両が韓国生産、63両がポーランド国内生産となる予定です。韓国の国軍放送KNFによると、現在、現代ロテムの月産約10両の戦車生産ラインは、全てポーランド軍向けに占有されている状況です。これは、ポーランドがウクライナ侵攻の影響を受け、戦力増強を急ぐ中で、K2戦車を迅速に導入したいという強い意向があるためと考えられます。

韓国軍向け車両の納入遅延の懸念

US DoD

韓国陸軍は現在約260両のK2を運用していますが、2023年5月には150両のK2改修・近代化バージョン(PIP型)の追加調達を決定し、発注しています。しかし、ポーランド軍向けで生産ラインが逼迫しているため、現在、韓国軍向けの車両生産は開始されていません。現代ロテムの生産体制を考えると、第二フェーズ分のポーランド向け納入が完了してから韓国軍向けの生産が始まるとされており、月産10両というペースを考慮すると、韓国軍への納入は早くても約1年後になると見られています。このため、韓国軍向けのK2PIP型の納入が遅延するのではないかという懸念が浮上しています。

ポーランド国内のK2生産ラインは2026年から稼働予定であり、これにより韓国の生産ラインに余裕ができるのは少なくとも2026年以降になると予想されます。しかし、韓国は国家政策として兵器輸出を積極的に促進しており、K2も海外市場に積極的に売り込まれています。新たな契約が締結された場合、特段の安全保障上の危機がなければ、国内向けよりも輸出が優先される可能性が高いと見られています。これは、輸出による経済効果や、国際的な影響力の拡大を目指す韓国政府の戦略が背景にあります。

現在のK2のパワーパックにはドイツ製トランスミッションが使用されていますが、第四バッチからは完全国産化されたパワーパックを搭載する予定です。これは、戦車の主要部品の国産化を進めることで、安定供給と技術的独立性を確保するための取り組みです。

また、K2のPIP型は、強化された戦場管理システム、韓国製の砲手および車長の照準器、そして国産パワーパックを統合する予定です。これにより、K2はより高度な情報共有能力と精密な照準能力を獲得し、戦闘効率が向上すると期待されています。このPIP型への改修は、K2が将来的な戦場においてもその優位性を維持するための重要なステップとなります。

K2ブラックパンサー戦車の生産状況は、ポーランドからの大規模な需要によって大きく左右されています。これは韓国の兵器輸出戦略の成功を示す一方で、自国軍への装備供給に遅延が生じる可能性という課題も浮上させています。今後、ポーランド国内での生産が本格化し、韓国の生産ラインに余裕が生まれることで、韓国軍向けの車両生産も加速することが期待されます。また、国産パワーパックの搭載やPIP型への改修は、K2戦車の性能をさらに向上させ、国際競争力を高める上で重要な役割を果たすでしょう。

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