ウクライナに提供されたM1エイブラムス戦車は12時間毎に清掃をしなければエンジンが壊れる

アメリカからウクライナに提供された31両のM1A1エイブラムス戦車。世界最強と称される戦車だが、いくつか課題がある。その一つがエンジンフィルターの清掃だ。

M1エイブラムスは世界最強と称される戦車の一つだが、ジェット燃料を使用する1500馬力のガスタービンエンジンの燃費の悪さが課題とされている。エイブラムスはリッターあたりの走行距離は243m。これはドイツのレオパルト2の458mの約半分だ。停まっていても、エンジンを稼働していれば、1時間あたり50リットルを消費する。そして、もう一つ課題とされているのが、このエンジンの複雑なメンテナンスだ。ウクライナメディアのkyiv independentのインタビューに答えた退役米陸軍中将で元第1機甲師団司令官のマーク・ハートリング氏は「エイブラムスを他の西側戦車と比較すると、それは乗組員にとってではなく、それを支援する人々にとって非常に困難な任務です」と指摘。

M1エイブラムスは、Honeywell AGT 1500ガスタービンエンジンとAllison X 1100-3 Bトランスミッションを組み合わせたFull-Up Power Pack (FUPP) と呼ばれる単一の統合推進ユニットによって駆動している。同エンジンは強力で繊細なジェットエンジンなので、塵や不純物による汚染や損傷を防ぐため、定期的な清掃が必要で、12時間ごとにエアフィルターを掃除しなければならない。つまり、一日二回の清掃が必要ということだ。もし、この”12時間ごと”のエンジンフィルターの掃除できなかった場合、100万ドルするエンジンに重大な損傷を与え、エンジンの分解を余儀なくされる可能性があり、さらにはギアボックスを分解して長時間の修理をしなければならない可能性もある。損傷の内容によっては現場で修理できない可能性もあり、最悪、エンジン交換を迫られる。

このような高度な修理はウクライナで行うことはできず、NATO軍の拠点、M1エイブラムスを運用している隣国ポーランドまで輸送する必要があり、31両しかない貴重な戦力の一つを長期間失うことになる。これらの問題はエンジンだけではなく、サーマルカメラから弾道コンピュータ、その他の多くの高度なコンポーネント、電子機器が故障した場合にも当てはまる。これらの故障は4名の乗員では対応できない。

「整備士、修理業者、部品供給システム、弾薬と燃料の補給、通信回線などのサポートインフラがなければ、戦車の戦闘能力は無いに等しく、1両500万ドルという巨額の費用は失われる。」とマーク・ハートリング氏は述べている。

2023年1月にバイデン大統領が31両の供与を発表していたM1エイブラムスは9月にようやくウクライナに到着。11月に戦場にあるとされるエイブラムスの写真が投稿されているが、どこの戦線に投入されているかは明らかにされておらず、戦闘も確認されていない。

Source

What will it take for Ukraine to maintain and operate the M1 Abrams? (kyivindependent.com)

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