北アフリカのモロッコがウクライナにT-72戦車を提供したことが分かった。アフリカの国としては初のウクライナ支援国になる。
アルジェリアメディアの報道によれば、モロッコの戦車がウクライナに提供されたことが確認されたのはチェコのペトル・フィアラ首相がシュテルンベルクにある同国の軍需企業エクスカリバーの戦車修理工場を訪れた際だ。ここではウクライナに提供するためのT-72戦車の改修が行われている。
そこで撮影されたのがモスグリーンとカーキの2トーンカラーで迷彩ペイントされた砲身を持つT-72戦車だ。こんな迷彩ペイントを戦車に施す国は限られており、それが北アフリカの西端に位置し、昨年のカタールW杯2022で旋風を巻き起こしたモロッコだ。西サハラで火種を抱えるモロッコ陸軍はアフリカでも屈指の戦車戦力を抱えており、その主力となるのがソ連製のT-72戦車だ。モロッコは1999年と2000年にベラルーシから140両以上のT-72、130両以上のT-72B、12両以上のT-72BKと約300両のT-72戦車を取得している。この内、約20両のT-72Bがウクライナ支援として送られたとされている。
詳しい経緯は不明だが、昨年2022年4月26日のドイツのラムシュタインにある米軍基地で行われたサミットでの決定によるものだとされている。この時、欧州各国はウクライナに大規模な武器支援を決定したが、サミットには北アフリカからチュニジアとモロッコも参加しており、この時に戦車の供与を説得されていたとされる。欧州にあったT-72戦車の多くが既にウクライナに送られており、欧州にあったT-72は枯渇しつつあった。既に20両は改修を終え、ウクライナ国内に輸送されている。
当初は中立、今はウクライナ支援
アフリカ大陸の多くの国でロシアの影響力が強い上、欧米とは一線を画しており、モロッコはロシアによるウクライナ侵攻が始まった当初は中立の立場を取っていた。3月、4月初めの国連のロシア非難決議も投票に参加せず、欠席していた。しかし、米国から立場をはっきりするよう圧力を受けたモロッコは4月末には米国、NATOに協調する方針を示し、ウクライナを支持するとして外交政策を大幅に転換した。とはいえ、これまで、これといったウクライナ支援の具体的な行動は見えず、ロシアの前大統領メドベージェフもカタールW杯の準決勝の際はNATOのフランス、クロアチアが負けることを望み、「アルゼンチンvsモロッコの決勝を望む」と発言しており、モロッコに対し敵意は持っていなかった。今回、モロッコによるウクライナ支援が明るみになり、ロシアは今後、モロッコにどういう態度で臨むのだろう。
Source
https://www.menadefense.net/afnord/le-maroc-offre-ses-chars-a-lukraine/