ウクライナ軍のレオパルト2A6戦車がロシア軍に鹵獲された事が初めて確認されました。レオパルト2A6はウクライナに提供されている西側製戦車としては最も新しいモデルです。
4月21日、ロシア軍はウクライナ軍のレオパルト2A6戦車を鹵獲して、牽引して運搬する映像を公開しました。その翌日にはトラックに乗せられ、モスクワに向けて運ばれる様子も撮影されます。また、ロシアの国営メディアであるRIAはロシア兵が鹵獲したレオパルト2A6を披露する様子を報じています。これらの事からもウクライナ軍のレオパルト2A6がロシアに鹵獲されたのは確実でしょう。
ロシア軍は今年3月初めにウクライナ東部の激戦地だったアウディウカでレオパルト2A6を鹵獲した事を発表していました。ウクライナ軍は今年2月にアウディウカから撤退しています。レオパルト2A6は第47独立機械化旅団に配備されていたものと思われますが、いつ頃放棄されていたものかは不明です。この時、鹵獲された車両は砲塔周りがスラット装甲で覆われており、今回、鹵獲が確認されたレオパルト2A6もスラット装甲が確認できますが、同一の車両なのかは分かりません。映像で確認する限り、車両の損傷は軽微で、状態はよく、履帯はおそらく破損していたため、牽引するために外されたものと思われます。ロシア軍はこれまでウクライナに提供された西側製戦車を鹵獲したという映像を何度か公開していましたが、車体重量が重い戦車は回収が面倒な上に、前線から近く、回収する際はリスクが伴い、実際に回収される事はありませんでしたが、今回、完全な鹵獲が確認されるのは初めてです。しかも、回収された戦車が、ウクライナが供与された戦車の中でも最も新しいモデルであるレオパルト2A6であることは生産元であるドイツにとっても頭が痛いところかもしれません。
レオパルド2A6
2001年に登場したレオパルト2A6戦車は主にドイツ軍とオランダ軍のために開発されたバージョンで今回、各国からウクライナ軍に供与されたレオパルト2シリーズの中では最も新しいモデルで、ドイツ連邦軍も配備中のモデルです。前身のA5から追加された砲塔前面部のくさび形の空間装甲ボックスにより防御力は向上。そして、A6では、これまでの120mm L/44滑腔砲から、より砲身の長い120mmL/55 滑腔砲に変更されています。これにより、最大射程は3500mから4000m以上に伸びており、その射程と精度から「スナイパー」とも称されます。この他、射撃管制装置や通信コマンドシステムも改良されています。ドイツは225両あったレオパルト2A5をA6にアップグレードしており、ドイツ軍が保有する戦車の中で最も多数を占めています。
ドイツのショルツ首相はウクライナの反攻作戦を支援するため2023年1月、各国が保有するレオパルト2のウクライナへの提供を承認、各国が旧式のレオパルト2A4を供与する中、開発生産元であるドイツはレオパルト2A6戦車のウクライナへの提供を正式に表明し、18両を供与します。2023年6月に始まった大規模反攻作戦では、ザポリージャの前線に早速投入されます。性能が高いこともあり積極的に前線に投入されましたが、その分、損失は多く、既に12両を失ったとされており、全滅に近い状態です。