ロシア国防省、輸出用のT-90S戦車のウクライナでの使用を正式に認める

ロシア国防省、輸出用のT-90S戦車のウクライナでの使用を正式に認める

ロシア国防省は近代化された輸出用戦車T-90Sをウクライナの戦場で使用する様子を映像付きで紹介した。ロシア軍が輸出用のT-90Sを使用していることは以前から報じられていたが、国防省が正式に使用を認めたのは初になる。

ロシア国防省はウクライナの前線と思しき場所で運用されているT-90戦車を動画付きで紹介した。動画冒頭に写る車内計器の表記が英語で記されていることから、このT-90が輸出用に開発製造されたT-90S戦車であることを物語っている。輸出用とあるように、通常、ロシア軍ではT-90S戦車は使用しない。ベースモデルのT-90Aか、アップグレード版のT-90M戦車になる。ロシアはT-90AのほとんどをT-90Mにアップグレードすることを決めており、侵攻序盤こそ、T-90Aは散見されたが、現在、ウクライナの戦場で運用されているほぼ全てがT-90Mになる。ここにT-90Sも正式に加わることなる。

ただ、この輸出用であるT-90Sをロシア軍がウクライナに投入するのは今に始まった事ではない。実は2022年秋以降から噂されており、インド軍に納入予定だったT-90Sを徴収、戦場に投入していると言われていた。実際、これまで少なとも8両のT-90Sの損失が確認されている。最初に確認されたのは2023年1月だ。今回、ロシア国防省が動画付きで紹介した事で、正式にT-90Sの使用を認めた事になる。T-90Sをロシア軍に向けて製造することは無いので、輸出用に生産されていたものをロシア国防省が徴収したものと推測される。

T-90Sとは

ロシア軍、輸出用のT-90S戦車まで戦線に投入
インド軍のT-90S(indian army)

T-90は、T-72戦車をベースに、T-80戦車の先進技術と新技術を用いて開発した第三世代戦車で1992年に配備が始まり、ロシア軍が実戦配備する戦車としては最も新しいシリーズになる。とはいえ、既に30年が経つこともあり、何度か近代化改修がほどこされ、2000年代に開発された改良型のT-90A、そして、2020年に就役したT-90Mが現在の主力になる。

そのT-90シリーズの輸出版として開発されたのがT-90S戦車になる。ベトナム、アルジェリア、トルクメニスタン、ベネズエラなどに輸出されているが、最大の輸入国はインドになり、インド版では改良された射撃管制システム、自動装填装置、更に主砲は新しい51口径2А46М-4 125mm滑腔砲に換装され、9K119M「レフレークスM」誘導ミサイルが発射可能になっている。砲塔には遠隔操作に対応した機関銃も搭載。電子システムもアップグレードされ指揮官は戦闘の全体像を把握でき、エンジンも強化され、出力・制御性が向上している。

ただ、T-90SはT-90Aのモンキーモデルになり、T-90Aに標準搭載されているレーザー誘導妨害装置である赤外線防護システム「Shtora-1」がない。戦車の目のような「Shtora-1」はT-90Aの特徴であり、ロシア国防省の動画でも「Shtora-1」は確認できない。自爆ドローン対策と思われる砲塔上部のゲージとKontakt-1 爆発反応装甲 (ERA)が追加されている。ロシアの戦車工場にどれだけのT-90Sの在庫があるのかは不明だ。ただ、輸出した戦車を再輸入している可能性もある。

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