韓国、ウクライナへの武器供与を検討。韓国軍はT-80戦車などソ連製戦車を多数保有

韓国、ウクライナへの武器供与を検討。韓国軍はT-80戦車などソ連製戦車を多数保有
ROKA

韓国大統領府の国家安保室長は20日の記者会見で、ウクライナに対する軍事支援の方針を見直す事を表明した。これまで、殺傷兵器は供与しない方針のもと、兵器支援は行ってこなかったが、これを再検討する。実は韓国軍は多数のソ連製車両を保有しており、方針が変われば、これらがウクライナに渡る可能性がある。

今月19日に北朝鮮を24年ぶりに訪問したプーチン大統領。金正恩総書記との首脳会談を行い、両首脳は、いずれか一方が他国から攻撃を受けた場合、「遅滞なく、保有するあらゆる手段で軍事的およびその他の支援を提供する」と明記された「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。北朝鮮とロシアとの関係は旧ソ連時代に戻り、軍事同盟に近い関係となった。これに一番、心穏やかではないのは北朝鮮と敵対する隣国の韓国だ。韓国と北朝鮮は休戦状態なだけであって、朝鮮戦争は終結していない。最近でも北朝鮮から飛来する汚物風船など、両国関係は緊迫していた。

韓国は今や兵器輸出大国だが、紛争地域に兵器供与しないという方針のもと、ウクライナには兵器支援は行ってこなかった。これは北朝鮮の友好国であるロシアとの関係に配慮してのことだ。プーチン大統領はこの韓国の方針について、今月6日には「韓国が紛争地域に武器を直接供給しない決定を高く評価する」と述べる程だった。ロシア側に配慮していたのにも関わらず、ロシアは今回、北朝鮮と軍事同盟に近い新条約を締結した。その前から、ロシアは北朝鮮から砲弾などを輸入、その見返りにロケット技術などを提供しているという噂があったが、その蜜月関係を公式に認めた形だ。梯子をされた形の韓国は新条約を非難、ウクライナの兵器支援を検討するという対抗措置に出た。

プーチン大統領は武器供与なら「適切な判断を下す」と報復を示唆しており、実際に韓国がウクライナに武器供与を行うかは不透明だが、もし、韓国がウクライナに兵器支援を行うなら、何をまず送るだろうか。現在、報道などで取り上げられているのは155mm砲弾や携行式の対戦車兵器、対空ミサイルだが、実は韓国陸軍は多数のソ連製軍用車を保有しており、これらが供与されることが期待されている。

債務の返済としてもらったT-80戦車とBMP-3歩兵戦闘車

韓国軍のBMP-3(Wikipedia)

韓国陸軍の主力戦車は国産のK1とK2戦車にアメリカ製の古いM48パットンになるが、実はソ連製のT-62、T-72、T-80戦車も保有している。合わせて20両ほど保有するT-62とT-72はアグレッサー部隊用の車両になり、対北朝鮮を想定した訓練での使用を目的にしたものだが、35両を保有するT-80戦車に関しては戦力として、現在も運用配備されている。T-80はソ連時代の1970年代に開発、1975年に量産が始まった第三世代の主力戦車。ロシア戦車では珍しいガスタービンエンジンを搭載しており、高い加速性を有している。ロシア・ウクライナ戦争でも両軍の主力戦車として活躍している。しかし、西側陣営である韓国がなぜ、30両以上のT-80戦車を保有しているのか。

実はこれは債務の返済の代わりに受け取った物になる。ソ連は韓国に対して借金をしていたが、ソ連崩壊に伴い、1990年代、返せるお金が無くなった。そのため、現物返済として、1995年から1997年にかけて33両のT-80U戦車が納入され、2005年には2両のT-80UKが納入された。T-80UはKontact-5の両爆発反応装甲が追加され、当初、1000馬力だったエンジンも1250馬力にアップした改良型で本来は海外輸出はしないモデルだ。T-80UKは指揮戦車型で基本スペックはT-80Uと変わらない。T-80Uの当時の価格は300万ドルとされており、日本円で100億円ほどの返済が戦車で支払われた形だ。これと同じ経緯で70両のBMP-3歩兵戦闘車も韓国は受領している。BMP-3は1980年代に開発された歩兵戦闘車で最大9名の歩兵を輸送。武装には強力な100mm低圧砲を搭載している。BMP-3は1両あたり250万ドルほどといわれている。

T-80もBMP-3も現在の韓国軍にとっては旧式の車両だ。主力戦車はK1とK2だけで既に1500両保有しており、歩兵戦闘車も2000年代に開発された国産のK-21が500両近く配備されている。T-80もBMP-3も軍に占める割合はごくわずかで、もし有事となっても兵站を混乱させるだけで今の韓国軍には必要ないと言ってもよいだろう。K1戦車やK9自走榴弾砲といった韓国製兵器を供与する場合、訓練のため欧州に兵を派遣するか、ウクライナ兵を韓国に受け入れる必要があり、修理などアフターケアのサポートも必要だが、ソ連製のT-80、BMP-3はウクライナ軍で運用されている車両なので、渡すだけ直ぐに戦場に投入が可能だ。サポートも必要ない。韓国はこれまで人道及び、非殺傷装備しかウクライナに供与しなかったが、実はアメリカに155mm砲弾を供与し、アメリカはその分の自軍の砲弾をウクライナに供与するなど直接ではないが、間接的な兵器支援は行っていた。韓国はウクライナへの兵器支援に踏み切るのだろうか。

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