ポーランドで開催された防衛展示会MSPO2025において、韓国の現代ロテム社とイスラエルのラファエル社は、K2「ブラックパンサー」主力戦車にTrophyアクティブ保護システム(APS)を統合するための戦略的提携契約を締結しました。この画期的な合意により、K2戦車は世界で最も先進的かつ実戦で実証されたAPSの一つを搭載することになり、その防御能力が飛躍的に向上します。
今回のTrophyのK2戦車への搭載は、主にポーランド軍向けのK2PL戦車への対応を目的としています。ポーランドは、ロシアからの脅威が増大する中、自国の防衛力強化を喫緊の課題としており、韓国と最大1000両ものK2戦車の調達契約を締結しています。このうち最大820両はポーランド国内でのライセンス生産が計画されており、既に韓国で生産された100両以上のK2戦車がポーランド軍に納入されています。今回の契約には、これらの既納入車両のアップグレードも含まれるとされており、ポーランド軍の戦車部隊全体の防御力強化に貢献することが期待されます。
韓国製戦車にAPSが導入されるのは今回が初めてであり、これは昨今の戦場の脅威の変化に対応するものです。近年、自爆ドローンや対戦車ミサイル、ロケット弾による攻撃の脅威が著しく増しており、これらの兵器に対する防御力向上は、現代戦車の喫緊の課題となっています。
TrophyのようなAPSの搭載は、今日の最新鋭戦車にとって事実上の標準装備になりつつあります。Trophyは、その開発元であるイスラエルのメルカバMk.4主力戦車に搭載されているだけでなく、アメリカ陸軍のM1A2 SEPv3エイブラムス戦車、ドイツのレオパルト2A7戦車以降にも採用されています。さらに、イギリスが現在開発中のチャレンジャー3戦車にも標準装備されることが決定しています。
アクティブ保護システム「Trophy」
Trophyは、ラファエル社が開発した世界で唯一完全に統合され、戦闘でその有効性が証明されたアクティブ保護システムです。このシステムは、主にロケット弾、ミサイル、迫撃砲などの対装甲兵器や対戦車攻撃の脅威から車両を保護するように設計されています。
Trophyの作動原理は、高度なレーダーシステムが接近する脅威を即座に検出し、自動的に発射される迎撃弾(インターセプター)によって飛翔体を撃墜するというものです。このシステムは2011年にイスラエル国防軍(IDF)のメルカバMk.4主力戦車に初めて装備されて以来、ガザ地区やレバノンとの紛争における実際の戦闘でその有効性を繰り返し実証してきました。例えば、RPG-7のような対戦車ロケットを正確に撃墜し、戦車とその搭乗員を保護することに成功しています。
さらに、Trophyシステムは、飛翔体の発射地点を正確に検出する能力も有しており、これにより戦車は脅威の発射源に対して迅速かつ正確な反撃を行うことが可能になります。これまでの運用実績として、5,000回以上のフィールドテストに成功し、車両や搭乗員に損害を与えることなく、1,000,000時間以上の運用時間を達成していることが報告されており、その信頼性と実戦における有効性は疑いの余地がありません。
今回の現代ロテムとラファエルの提携は、K2戦車の防御能力を飛躍的に向上させるだけでなく、ポーランド軍の戦力強化、さらには将来的に韓国軍の戦車にもAPSが導入される可能性を示唆するものであり、世界の主力戦車の防御技術の進化における重要な一歩と言えるでしょう。