
スウェーデン国防省は、ロシアからの侵略の脅威に対応するため、現行のStrv122戦車110両をStrv123Aへ改修し、ドイツよりレオパルト2A8戦車44両を調達することを発表しました。
具体的には、スウェーデン国防省は、ロシアの脅威に対抗するための戦力強化を目的として、2031年までに運用中のStrv122戦車110両をStrv123Aに改修し、ドイツのKNDS社からレオパルト2シリーズの最新版であるレオパルト2A8戦車44両を調達することを公表しました。レオパルト2A8はスウェーデン軍においてStrv123Bと命名される予定です。
スウェーデン国防資材局(FMV)が主導する本プロジェクトは、既存車両の改修と新規車両の購入の2つのプロジェクトに分類され、総費用は22億1000万ユーロに上ります。既存のStrv122戦車を改修する「Strv123A」プロジェクトは2027年から2030年にかけて実施され、新型車両44両を調達する「Strv123B」プロジェクトは2028年から2031年にかけて納入される予定です。これら合計154両の戦車は、NATO加盟国の戦車と同一の仕様を採用することで、多国間の共同戦闘および兵站システムの統合を図り、NATO作戦における相互運用性の強化に貢献します。
Strv123A戦車

Stridsvagn 123A(Strv 123A)戦車は、従来のStrv 122(レオパルト2A5SE)を基盤とし、性能、インターフェース、防御力、攻撃力を徹底的に強化した近代化モデルとなります。
Strv122は、ドイツのレオパルト2A5をスウェーデン軍仕様に改良したモデルであり、1990年代にドイツから29両が購入され、91両が国内でライセンス生産されました。このうち、10両がウクライナに供与されており、残りの110両すべてが改修の対象となります。
火器管制
Strv122には120mm滑腔砲L/44が搭載されていますが、Strv123AではこれをL/55口径に換装します。これにより、射程、精度、貫通力が向上し、使用可能な弾薬の種類も増加します。車長、砲手、操縦手の暗視システムを更新し、夜間/サーモカメラ付き照準装置、車長・射撃手用新型暗視・視察システム、ナイトドライブカメラ、NATO標準C2対応へのアップデートが実施されます。赤外線センサーと発煙弾発射装置も改修されます。また、履帯とサスペンションシステム部品も改修され、車重増加が接地圧と機動性に影響を及ぼさないよう対策が施されます。
防護
Strv122は、レオパルト2A5よりも厚く角度の付いた複合装甲を採用していましたが、Strv123Aでは対戦車ミサイルやAPFSDS弾への耐性向上を目的として、これをさらに強化します。ウクライナでの戦争で注目されたドローンによるトップアタック(上面攻撃)対策の一環として、天板装甲が追加強化されます。車体底部も再設計され、V字形状への改修や増加装甲プレートの追加により、地雷・即席爆発装置(IED)への耐性が向上します。高強度セラミックと金属層構造によるサイドスカートも新設計され、RPGや爆発反応装甲(ERA)攻撃に対する側面防御力が強化されます。新世代戦車の標準となりつつあるアクティブ保護システム(APS)は搭載されませんが、将来的な搭載の余地は残されています。Strv 123Aの装甲強化は、単なる「防御強化」に留まらず、兵士の生存性、都市戦への適応性、および継戦能力を重視した設計思想の表れです。
Strv122はレオパルト2A5を基盤としていますが、改修によりレオパルト2A7と同等の能力を獲得します。また、スウェーデンのNATO加盟に伴い、NATO標準規格に合致する設計がなされており、部品および構成も欧州連携を意識した内容となっています。