米中の対立が増す中、来たる地上戦に備えて、どうやらアメリカは中国の99式戦車を、中国はアメリカのM1エイブラムスとそれぞれの主力戦車を模倣したレプリカを製造しています。
米国が模倣した99式戦車
今年の8月、1枚の写真がSNS上に投稿されました。それは米軍基地近くで中国人民解放軍の主力戦車99式と思しき車輌がトラックで輸送されている様子です。99式戦車は、中国の第3世代主力戦車であり、それをアップデートした99A式は3.5世代戦車になります。対戦車誘導ミサイルを発射することもできる125mm滑空砲、重機関銃を搭載する遠隔兵器ステーションを搭載。モジュラー複合装甲と爆発反応装甲を装備した防護力は世界トップクラス、それながら車体は50トンと主力戦車の中では比較的軽く、最高速度は80km/hと主力戦車では世界2位(1位はロシアのT-14アルマータ)のスピードを誇り、地上戦の際は最も脅威となる兵器です。
中国の主力戦車である99式を米軍が入手するのは難しく、撮影された車両は99式に形状や迷彩を模倣したレプリカと推測されています。では、なぜ、99式のレプリカを制作したのか、それは、米軍が対中国を想定した戦闘訓練を行っている、もしくは行うからです。模擬戦闘を行う際には、敵役には敵の戦闘服を着させたり、武器を持たせるなどして、なるべくリアルの戦場に近い形にて敵の姿形を目に慣れさせます。とはいえ、敵国の兵器を手に入れることは難しいので、例えば米空軍による戦闘機の模擬戦闘では自軍のF15やF16に敵国の戦闘機の迷彩を施したりするなど、様々な工夫をこなして、より実戦に近づけます。99式戦車のレプリカもその一環であり、米軍が本格的に対中国を睨んだ戦闘訓練を行っていることを意味します。また、今年に入り、米軍が採用するジャベリン対戦車ミサイルのロゴがこれまでのロシアのT-72戦車から99式戦車に代わっており、ロシアよりも中国を敵対視していることが分かります。
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中国も対抗してM1エイブラムスを制作
#Zhuhai2021
— Indomiliter.com (@indomiliter) September 29, 2021
Ngeri, Cina Jadikan MBT Abrams Sebagai Sasaran Tembakhttps://t.co/qYh7Z1pcj1 pic.twitter.com/SPQ6YcTawc
このような動きはもちろんアメリカ側だけではなく、中国も行っています。しかも、中国は堂々と軍事フォーラムで展示しました。9月に朱海で開催された国際航空宇宙博覧会で米国M1A2エイブラムス戦車に似た車両が展示されました。公の場で多少、配慮したのかM1エイブラムスで見たことないピクセル迷彩を施しています。本物の57トンよりもだいぶ軽い3トンで、時速は本物72km/hよりも早い86km/hで200kmを移動します。レーザー交戦装置を装着しており、米国の99式戦車同様、模擬戦闘演習で使用することを目的に製造されており、これは対アメリカを睨んでのことかと思いますが、もうひとつの背景に台湾侵攻があると思われます。
米国はトランプ政権下の2019年7月にM1A2Tエイブラムス戦車108両を台湾に売却することを決定しており、それはバイデン政権にもなっても覆っておらず、順調にいけば2022年に台湾に納入されます。M1エイブラムスは最も戦闘実績がある戦車であり、実績ベースであれば世界最強です。120mm滑空砲に99式と同等の防護能力を持ちあわせています。1980年代に採用された古いモデルながらマイナーバージョンを繰り返し、最新の戦闘能力を維持しています。これまで台湾にはM60と古い戦車しかありませんでした。台湾侵攻を考える中国にとってM1エイブラムスは目の上のたんこぶです。
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冷戦時から米国とソ連(ロシア)の間ではこのようなことが行われていました。互いにこれが無駄に終わればよいのですが。