ロシア国防省、対空砲を搭載した陸自の高機動車を公開

ロシア国防省、対空砲を搭載した陸自の高機動車を公開

ロシア国防省は陸上自衛隊が使用していた高機動車の荷台にソ連製の対空機関砲ZU-23-2を荷台に搭載した自走式対空砲を公開した。この高機動車は自衛隊で不要となった車両が海外に鉄屑として売却され、本来解体されるはずが違法に売却されたものとされている。

ロシア国防省は6月5日、Telegramの公式アカウントにロシア空挺軍の部隊が陸上自衛隊が使用していた高機動車の荷台からソ連製の対空機関砲ZU-23-2で、対空射撃を行う様子を公開した。場所はウクライナ東部ドネツク州ハシフ・ヤール近郊とされる。もちろん、高機動車にソ連製の対空砲を搭載したモデルはなく、ロシア軍が独自にカスタマイズした高機動車の対空砲仕様になる。座席に乗っていたロシア兵が対ドローン用の電子戦指向性兵器を持っていたので、この高機動車は対ドローン戦が主な任務で、そのためにカスタマイズされた事が推察される。高機動車が最初にロシア軍に利用されているのが確認されたのは2022年11月とされ、2023年3月には写真や修理される様子の映像が公開されている。2023年11月には今回と同じ対空砲を乗せた車両が確認されており、今回の車両が同じ車両かは不明だが、ロシア軍は少なくとも3台の高機動車を保有しているのが確認されている。今の所、高機動車が破壊されたという報告は無い。

高機動車
出典:陸上自衛隊

高機動車(High Mobility Vehicle:HMV)は1990年代初頭に陸上自衛隊に採用された人員輸送用自動車で、略して”高機”とも呼ばれている。開発は トヨタ自動車、製造は同グループの日野自動車が担当している。自衛隊のために開発された軍事仕様だが、あくまで人員輸送が目的であり、装甲車両ではなく、前線での使用には向いていない。標準武装は無いが、120mm迫撃砲を牽引する重迫牽引車や後部に93式近距離地対空誘導弾といった兵器を搭載した派生モデルがある。これまで約3000両が生産され、自衛隊に配備されている。高機は自衛隊専用車両で民間には販売されておらず、国外にも輸出されていない。

では、なぜ、ロシア軍が高機を保有しているのか?自衛隊では不要となり退役した高機を業者に鉄屑として売却している。売却後、業者は車両を解体して鉄屑として処理しなければならない。しかし、自衛隊は民間に売却したら、そっれきりで、適切に解体処理したかを確認していなかったとされ、いくつかの車両はそのまま、海外に売却、もしくは適切に解体されず、海外で再度組み立て直して利用されているとされる。それを、ロシア軍が何かしらのルートから手に入れたのだろう。もともと、ロシアは日本製中古車の輸入国でもある。今回、ロシアで確認される前から高機は海外の中古マーケットで売買、それを再輸入する日本人もいるなど、高機の売買は周知の事実だった。

しかし、その高機が海外で軍事利用、しかも、ウクライナを侵略するロシア軍に利用されている事が発覚した事を防衛省も重く受け止め、ようやく昨年から調査に乗り出した。昨年12月に調査結果と再発防止策を発表。2018年4月~2023年3月にかけて売却した自衛隊車両計約7500台、委託した業者約90社を調査した結果、日本とフィリピンで少なくとも18台の車両が解体されずに現存しているのを確認。業者の内1社が転売目的で車両を保有し、1社が書類提出を怠ったとして指名停止の処分を下した。また、再発防止策として、解体後の車両の切断箇所の提示、自衛隊施設で作業することなどを決めた。

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