半世紀前の戦車が「ドローンキラー」に変身!ウクライナが受領した新兵器「Leopard 1 chassis with Skyranger 35」

©Rheinmetall AG

2026年9月3日、ウクライナ空軍第1020対空ミサイル連隊が、新型防空車両「Leopard 1 chassis with Skyranger 35」をすでに受領し、実戦配備していることを明らかにした。走行の様子や、飛来するドローンを撃墜する映像も公開され、半世紀以上前に登場した旧式戦車の車体が、最新の防空兵器として戦場に姿を現したことが裏付けられた形だ。部隊の指揮官は、多機能な装備から「まるで宇宙船を運用しているようだ」と語っている。なお動画の公開は9月だが、兵士の服装などから、実際の受領時期はさらに早かった可能性も指摘されている。

この車両は、ドイツの防衛大手ラインメタルが2025年10月10日に発表した供給契約に基づくものだ。半世紀以上前の戦車「レオパルト1」の車体に、最新鋭の対空砲塔「スカイレンジャー35」を搭載した構成で、契約額は数億ユーロ規模。資金はEU加盟国が凍結したロシア資産の運用益を活用する「ウィンドフォール利益メカニズム」を通じて拠出され、製造と統合はエリコン系の防空技術を受け継ぐラインメタル・イタリアがローマで担当した。発表時点では車両数や納入時期は明らかにされていなかったが、今回の受領発表で、ついにその実像の一端が見えてきた。

1960年代生まれの車体

ドイツ、ウクライナにレオパルト1A5戦車の最初のパッチ10両を納入
Bundeswher

レオパルト1は西ドイツが1950年代から開発を進め、1965年に連邦軍へ引き渡された第二世代主力戦車だ。設計で重視されたのは重装甲よりも機動力で、初期型は約40トンの車体に830馬力のディーゼルエンジンを搭載し、路上最高速度は65km/hに達した。主砲には105mmライフル砲を採用している。

1965年から数年間で西ドイツ向けだけで1,800両超が生産され、その後A1からA5まで改良型が登場した。最終的に10カ国以上で運用され、総生産数は4,700両を超える大ベストセラー戦車となった。ドイツ連邦軍では2003年に退役したが、その車体は回収戦車や架橋戦車、工兵車両、そして対空戦車「ゲパルト」など、数多くの派生型のベースとして使われ続けてきた。「古い戦車」ではなく「長く使える頑丈な車体」として価値を残していたわけだ。

最新鋭「スカイレンジャー35」を搭載

組み合わされるスカイレンジャー35は、レーダーや光学センサーによる探知・追尾と機関砲を一つに統合した、移動式の近距離防空システムだ。中核となるのは35mm KDG 35/1000リボルバーカノンで、35×228mm弾を毎分最大1,000発の速度で発射でき、有効射程は約4,000mに達する。最新型はAESA方式のサーチレーダーを備え、小型ドローンなら約5km、戦闘機サイズの目標なら約20km先から探知できるとされる。これにEO/IRカメラとレーザー測距機能を組み合わせ、252発の砲弾を砲塔内に収める。

対空能力の要となるのが、AHEAD空中炸裂弾への対応だ。数十センチ程度の小型ドローンに弾丸を直接命中させるのは難しいため、あらかじめプログラムした地点で弾を空中炸裂させ、内部の子弾を目標周辺にまき散らして撃墜する。ドローンや徘徊弾薬が大量に飛び交う現在の戦場に、特に適した仕組みといえる。

なぜ「レオパルト1」なのか

スカイレンジャー35は特定の車体専用の兵器ではない。ラインメタルはピラーニャやボクサー、レオパルト2、Lynx KF41など複数のプラットフォームへの搭載を公開してきた。試作段階では、スイスのオクセンボーデン試験場で2024年9月に、レオパルト1A5BE車体・無人砲塔・乗員2名という構成の実証車が26カ国の関係者に披露されている。今回、ウクライナ向けには、すでに欧州各国に多数存在するレオパルト1の車体が選ばれた。対空車両には最新主力戦車ほどの重装甲は必ずしも必要ない。むしろ求められるのは、高い機動性、不整地走破能力、大型砲塔を載せられる余裕、そして既存車体・部品を活用できる点だ。レオパルト1はこの条件に合致していた。現場のウクライナ兵からも機動性と耐久力は高い評価を受けており、エイブラムスやレオパルト2よりも信頼は高い。

「ゲパルト」の系譜を継ぐ

米国、ウクライナのために5倍の値段で60門のゲパルト対空自走砲を購入
mod ukraine

この組み合わせは、ウクライナで実績を上げてきた対空自走砲「ゲパルト」の後継とも位置付けられる。ゲパルトもレオパルト1をベースに開発され、35mm機関砲を2門搭載していた。スカイレンジャー35は砲こそ1門だが、最新の探知・追尾センサーや射撃管制、AHEAD弾を組み合わせることで、現代の無人機戦に適応させている。整備や運用の面でも、すでにウクライナに供与済みのレオパルト1やゲパルトと同じ車体・弾薬体系を使えることは大きな利点だ。

最大の標的はドローンと徘徊弾薬である。ウクライナの戦場では、シャヘド系自爆ドローンに加え、より高速なゲラン型ドローンやS-8000バンデロールミサイルなど、迎撃用ドローンでは対処しづらい高速目標も飛来する。安価な小型無人機の迎撃に高価な地対空ミサイルを使うのも経済的に見合わない。機関砲とAHEAD弾を用いる本車両は、その中間の脅威に対応する隙間を埋める存在となる。なお、防空モジュール1基あたりのコストは1,100万〜1,300万ユーロ程度と見積もられており、契約全体の金額は搭載する車両数の多さというより、この高性能モジュールの単価を反映したものとみられる。

将来はミサイル搭載も視野に

ラインメタルによれば、スカイレンジャー35は将来的に誘導ミサイルを搭載できる設計になっている。実現すれば、近距離の小型ドローンには機関砲、遠距離・高性能な目標にはミサイルで対応する多層防空を、1台の車両で担えるようになる。

旧式兵器を最新戦場に再利用する発想

「Leopard 1 chassis with Skyranger 35」の意義は、単なる性能の高さにとどまらない。退役済みの車体に最新のセンサーと武器を組み合わせるという発想そのものが、現代の防空に求められる姿を象徴している。安価なドローンを、安価な弾薬で、大量に撃墜する。半世紀前に生まれた戦車は今、ウクライナの空を守る最前線に立っている。

半世紀前の戦車が「ドローンキラー」に変身!ウクライナが受領した新兵器「Leopard 1 chassis with Skyranger 35」
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG