ロシア軍にこれまで見たことがない装甲戦闘車が登場した。ロシア軍が開発した新型車両と思ったが、どうやら、あり合わせの兵器で急場しのぎで開発した兵器のようだ。
Battleship MT-LB IFVs getting ready. These have 25mm cannons on top.
— LogKa (@LogKa11) March 6, 2023
They could’ve just used a ZU-23-2 23mm cannons, but this one has a height advantage. Useful for long range, unsure about short range combat pic.twitter.com/0rUxkQvYds
後部に高い砲塔を搭載する車体、『機動戦士ガンダム』でジオン軍が使用していた”マゼラアタック”のようにも見える、これまであまり見たことない異様な形。中東のイスラム国など民兵組織があり合わせの兵器で取って付けたような急増兵器に見えるが、これは兵器不足に悩むロシア軍が作った急増兵器で、装甲牽引輸送車に本来、艦艇に搭載する艦載砲を組み合わせた戦闘車両だ。
MT-LB装甲牽引車に25mm艦載砲を搭載
車体に利用しているのは1960年代に量産が始まったMT-LB装甲牽引車になる。牽引車と言うようにこの車両は同時期に開発された牽引式の100mm対戦車砲のMT-12を牽引するために開発された車両で主に火砲や兵員の輸送を目的にしている。そのため武装は7.62mm機関銃のみと火力は無い。
Video of a Center grouping MT-LB with a ZU-23-2 cannon and a Ural truck with an S-60 cannon being used in ground attack mode. https://t.co/bIJFcBbYSS pic.twitter.com/1T04cY4DYx
— Rob Lee (@RALee85) January 7, 2023
しかし、車体上部がフラットなこともあり、火砲の搭載が容易で、昔から対空機関を搭載するなどした、カスタムモデルがいくつか製造されており、今回のロシア・ウクライナ戦争でも両軍がZu-23-2といった対空機関砲を搭載したMT-LBを投入している。
しかし、その対空砲も枯渇しているのか、ロシア軍は今回、なんとMT-LBに艦載兵器である25mm 2M-3艦載機関砲を搭載したのだ。25mm 2M-3は海軍の小型戦闘艇、潜水艦に搭載するために第二次世界大戦直後の1945年に開発された二連装艦載機関砲だ。強力な25x218mm弾を使用、発射速度は毎分270~300発。25mm弾の射程は最大2.5 kmで、高度は1.7 kmに達する。生産自体は1980年代に終了。既に兵器としては廃止さているようだが、兵器が枯渇する中、倉庫から呼び戻したのであろう。
その高い砲塔からこの魔改造されたMT-LBは対ドローン兵器と目されている。艦載時は油圧式で砲塔を操作できたが、この車両ではどうなのか不明だが、一応手動でも操作はできるようだ。ただ、回転速度は決して早くなく、照準も手動であるため艦載時でも対空砲としての使用は限定されていた。戦闘機よりは低速とはいえど、対ドローンにどこまで有効かは不明だ。MT-LBの正面装甲が14mmと装甲が弱いのと俯角が取りづらそうなので陸上戦闘にはあまり向いていないように見える。またMT-LBは整地を最大61km/h、不整地を31km/hで走行するがバランスが悪そうなので移動も気になるところだ。
ウクライナ軍もMT-LBを使用した急増兵器の開発は行っている。ウクライナ軍の場合は、本来、牽引するMT-12 100mm対戦車砲をMT-LBの上に搭載し、MT-LBをいわゆる駆逐戦車、自走砲と化した形だ。一体化することで、砲兵の陣地転換は早くなり、機動性が増したことになる。MT-12の射程自体も最大8kmと後方からの支援が可能だ。
ウクライナ軍はMT-LB装甲牽引車にMT-12 100mm対戦車砲を搭載した車両を戦場に投入した。対戦車砲を搭載し、水平射撃する様子はまるで絶滅した駆逐戦車に見える。[adcode]SNSに自走砲のような変わった戦[…]
損害が激しいロシア軍は戦車や戦闘車両が枯渇、戦車の主力は予備役で眠っていた1950年代に開発されたT-62戦車になりつつあり、装甲車も最近、1950年前半に開発されたBTR-50がウクライナに投入されているのが確認されている。ロシア軍の倉庫にはまだ多くの装甲車と火砲が眠っているとされ、今後はこういった急増品兵器が増えてくる可能性がある。
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