ドイツのラインメタルはウクライナに開発中の射程100kmの155mm砲弾を提供する

ドイツのラインメタルがウクライナに開発中の射程100km砲弾を提供
ウクライナ軍のPzh2000自走榴弾砲

ドイツの軍需企業ラインメタル社は今年、射程100kmを有する砲弾のプロトタイプをウクライナに納入する予定だと最高経営責任者(CEO)のアルミン・パッペルガー氏が語った。

Rheinmetall-Chef warnt vor Scheitern der Zeitenwende

2023年10月中旬、ドイツ政府はラインメタルに対し、ウクライナ向けの155mm砲弾10万発以上を注文するなど同社はロシアの侵略に対抗するウクライナを支援するため、砲弾の生産に注力しており、2024年にはドイツ、スペイン、南アフリカ、オーストラリアの工場で弾薬生産能力を大幅に増強し、年間生産能力を約70万発にする計画だ。アーミン・パッペルガーCEOは今年、ウクライナに「数十万発」の砲弾を納入すると述べている。ドイツメディアのハンデルスブラットによると、これらには射程100kmの砲弾の試作型も含まれるという。ラインメタル社が開発製造する155mm自走榴弾砲PzH2000の通常弾(DM121)の射程が36kmなので、その3倍になる計算だ。ただ、プロトタイプとあるように、現在開発中の試作品であり、この砲弾が何でどういった仕組みの物なのかは一切明らかにされていない。

ウクライナに提供されている長距離砲弾

M982エクスカリバー

カナダがウクライナに155mm砲用にエクスカリバー誘導砲弾を提供
US Army

ウクライナに供与された155mm榴弾砲用の長距離砲弾というと「M982エクスカリバー弾」がある。155mm砲弾の通常射程が20~30kmなのに対し、同弾の射程は40kmと長く、最大60kmの距離を狙うこともできる。そして、最大の特徴がGPSによって誘導される精密誘導弾であることでミサイル並みの高精度な攻撃を行える。一般的な榴弾砲は敵がいる位置のUTM座標に基づいて砲撃を行うが、風などの影響で着弾地点がずれたりする。その点、エクスカリバーは発射されると安定翼が展開し、GPS誘導によって指定された場所に着弾するように軌道を調整する。2007年、イラクで初めて実戦導入され、約92%が標的の4m以内に着弾するという高い精度を示した。

VULCANO

155mm gun precision guided bullet VULCANO
Leonardo

現在、ウクライナに送られている155mm砲弾で最も射程が長いのがイタリアの軍需企業Leonardo社とドイツのDiehl社によって共同開発された「VULCANO」になる。同弾にはBER (Ballistic Extended Range) と呼ばれる無誘導弾とGLR (Guided Long Range) と呼ばれる誘導弾の2つがあり、全ての155mm榴弾砲と互換性がある。ドイツは2022年夏にウクライナへの追加の軍事支援として155mm榴弾砲から発射可能な精密誘導弾の「VULCANO」弾、225発を提供すると発表している。射程を長くするため弾薬にはサボ(Sabot)、安定翼が付いており、従来の榴弾より弾頭は細く、質量も少なくなっている。そのため爆発半径は小さいが、高速で飛翔、弾頭にはタングステンを用い、十分な威力を維持している。誘導弾のGLRはINS(慣性航法装置)とGPSによって誤差1mの範囲でピンポイント射撃を行える。これは同じ誘導弾のエクスカリバーと一緒だが、 GLRは移動体も狙える終末誘導機能を持ち合わせている。セミアクティブレーザーセンサーが搭載されており、飛翔の最終段階になると機能、着弾地点付近にある標的を検知、移動するターゲットも攻撃する。信管のプログラムも可能で、爆発効果を最適化する。

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155mm gun precision guided bullet VULCANO

ラムジェット砲弾「155MM HE-ExR」

最大射程150kmの155mm用ラムジェット砲弾「155MM HE-ExR」
Nammo

射程が長いVULCANOでも最大70kmと今回、ラインメタルが供与するという100kmという射程にはまだほど遠い。ドイツが提供する100km超えの砲弾とはなんなのか?考えられるのがラムジェット砲弾の「155MM HE-ExR」だ。ノルウェーの軍需企業Nammo社が開発するラムジェットエンジンを搭載した超長射程誘導砲弾で最大射程は150kmにもなる。誘導方法は示されていないが精密誘導弾で100km以上離れたサッカー場の中心サークルを狙う精密さを持ち合わせている。ロシアに多大な損害を与えている高機動ロケットシステムHIMARSのロケット弾と同等の射程と精度を持ち合わせていることなり、自走榴弾砲でも同様の攻撃できれば戦術の幅は大きく広がる。この砲弾が対象としているのはラインメタル社が開発製造するL52タイプの155mm榴弾砲になり、これはドイツのPzh2000、スウェーデンとノルウェーが共同開発したアーチャー自走榴弾砲、アメリカのM109とウクライナに供与されている自走榴弾砲で使用できる。

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最大射程150kmの155mm用ラムジェット砲弾「155MM HE-ExR」

昨年冬から砲弾不足が叫ばれていたウクライナ軍だが、NATOからの砲弾支援がぼちぼち届いているようで、SNS上ではウクライナ軍が砲撃する様子が散見されてきた。アメリカも先日、過去最大規模の軍事援助を発表。今後、多くの砲弾がウクライナに届けられるものと思われる。

ラインメタルはウクライナに砲弾を製造する新工場を開設する計画であり、2024年2月に覚書を締結。2025年から稼働予定で年間6桁の155mm砲弾を製造する予定であり、ウクライナ国内での生産能力も今後、増加が見込まれる。

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