ロシア軍、アルメニアに納入予定のTor-M2防空システムを戦地に投入!代金は支払い済

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ロシア軍がアルメニア軍迷彩に塗装されたTor-M2防空システムを使用している事が報告されている。同兵器はアルメニア軍に納入される予定であり、既に代金は支払い済とされる。つまり、ロシアは契約を無視して、兵器を自軍に転用したことになる。

複数のTelegramチャンネルはロシア軍では見慣れない塗装のTor-M2防空システムが登場したと報告している。このTor-M2はウクライナ軍が侵攻するロシアのクルスク州に配備されているものとされているが、注目すべきは車両の塗装だ。ロシア軍の迷彩は国内の森林地帯に合わせたダークグリーンとオリーブグリーンをベースにしており、兵士の戦闘服はもちろん、車両もグリーンをベースに塗装している。しかし、画像のTor-M2は茶色ががった塗装がされてており、ロシア軍で見慣れない塗装だ。この塗装はロシアの南に位置するアルメニア軍の特徴に一致している。ロシア軍のTor-M2は履帯式が多いが、アルメニア軍は装輪式だ。この事から、アルメニア軍に納入予定であった車両をロシア軍が持ち出したと推察されている。

アルメニア軍塗装のTor-M2

ロシアの南コーカサス地方に位置するアルメニアは旧ソ連構成国で1991年のソビエト崩壊と共に独立。しかし、その後もロシアとは密な関係をもち、ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」に加盟し、ロシアとは同盟関係にある。国内にはロシア軍基地があり、ロシア軍が駐留。もちろん軍の兵器はソ連/ロシア製で占められ、同国の軍事力はロシア頼みだ。2020年に隣国アゼルバイジャンと「ナゴルノ・カラバフ紛争」が勃発するとアルメニアは大敗し、実効支配していた同地域をアゼルバイジャンに奪われてしまう。軍備の増強を図るアルメニアはロシアに大量の兵器発注をしていた。しかし、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻。戦争が長引くと、ロシアからの兵器の納入が遅延。アルメニアは2023年と2024年に、既に代金を支払ったにも関わらず、ロシアが弾薬、武器、その他の防衛システムなど、重要な軍事装備を契約通り納入していないと主張し、この問題を何度も提起した。しかし、今回、納入予定だったTor-M2を戦線に投入した事からロシアが契約を反故にした事が分かる。Tor-M2のレーダーは最大25kmの範囲の標的を48個まで検出、最大10個の目標を同時追跡、8発から最大16発の対空ミサイルを搭載し、1000~12,000mの距離、最大高度10,000mの範囲にいる飛行ターゲットを同時に最大4つを撃墜する。「ナゴルノ・カラバフ紛争」でアゼルバイジャン軍のドローン・無人機に苦しめられたアルメニアにとっては最も重要な兵器だ。

過去にもあった輸出兵器の転用

ロシアが兵器の納入契約を破るのは何もこれが初めてではない。過去にはインド軍向けに生産していたT-90S戦車をウクライナ戦線に投入されているのが確認されている。しかも、ロシアはこれを隠そうとせず、ロシア国防省の公式SNSでその様子を公開している。この他、友好国であるシリア、ベネズエラ向けに生産していた兵器もウクライナ戦争に転用していると言われている。既にインドはロシア兵器離れを進めており、調達先の多様化、国産化を進め、更にはロシアの代わりにライセンス生産で兵器の輸出も検討している。戦争の影響もあって、ロシアの兵器輸出は激減している。かつてはアメリカに次ぐ兵器輸出大国だったが、現在はフランスに抜かれ3位に。2023年以降はほとんど兵器輸出はできていないとされ、来年には更に順位を落とすだろう。

アルメニアと同盟関係は破綻

今回のアルメニア向けの兵器の転用は両国の関係性を表している。現在、両国の同盟関係は事実上破綻していると言われている。その発端は2020年の隣国アゼルバイジャンとの間で勃発した係争地を巡る「ナゴルノ・カラバフ紛争」だ。もともと国力で上回るアゼルバイジャンはトルコの支援も受け、アルメニアは軍事力で大きく劣っていた。そこで、CSTOの同盟国であるロシアに支援を求めたがロシアはアルメニア本土での戦闘がない限りは参戦しないという姿勢を貫き、中立を維持、支援を行わなかった。結果、大敗し、実効支配していたナゴルノ・カラバフをアルメニアは失い、同国のロシアに対する信頼は失墜する。同国のパシニャン首相はロシア主催の経済首脳会議でプーチン大統領を無視して、アゼルバイジャンのアリエフ大統領と口論したり、記念撮影ではあからさまに距離をとったり、CSTOの首脳会議を欠席したりと、あからさまな態度を見せる。2024年4月には平和維持部隊としてアルメニアに駐留していたロシア軍が撤退。5月にはCSTOの資金拠出を停止。そして、6月にはとうとうCSTOの脱退を正式に表明した。そして、7月にはアメリカ軍と合同軍事演習を実施するなど、欧米・NATOに接近する動きを見せており、ロシアは懸念を表明していた。アルメニアとロシアの関係は現在、完全に破綻している。今後もロシアからアルメニアに兵器が納入される事はおそらくないだろう。

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