M142 HIMARSとM270 MLRSの違い

ウクライナ軍は15日、イギリスから送られたM270多連装ロケットシステム(MLRS)を受領したと発表しました。M270はアメリカから提供されたM142 HIMARSと並び、高精度、長射程の精密ロケット兵器です。HIMARSは一足先にウクライナ軍に配備され、ロシア軍の軍事拠点をことごとく破壊しているとウクライナは発表していますが、M270にも同様の活躍が期待されています。この2つは異なる兵器ですが実はどちらも同じロケット弾を使用するなど、性能や特徴に共通事項が多く似た兵器になります。それぞれどういった違い、特性があるのでしょうか。

M142 HIMARS

M142 HIMARS
US Army

”M142 High Mobility Artillery Rocket System(高機動ロケットシステム)”ことHIMARS(ハイマース)は米国のロッキード・マーティン社によって1990年代後半に開発された軽量の自走式多連装ロケットランチャーです。2010年に米陸軍で運用が始まり、イラクやアフガニスタンで使用されています。

M270 MLRS 

M270 MLRS
US Army

”M270 Multiple Launch Rocket System(多連装ロケットシステム)”ことMLRSは米国のVought(ヴォート)社によって1970年代に開発された自走式多連装ロケットランチャーです(現在はロッキード・マーティン社が保守を担っている)。1983年に米陸軍で運用が始まります。既に生産は終えていますが、これまで1300両が以上が生産され、10か国以上が採用。陸上自衛隊も配備しています。

搭載するロケット・ミサイルは一緒

M142 HIMARS・M270 MLRSが共に使用するロケット/ミサイルは同じです。大きく3つの兵装があり、1つ目のMLRSは主に面攻撃を目的としたクラスター爆弾を搭載した無誘導ロケットで最大射程は32km~45km。2つ目のGMLRSは都市部や山間部の標的を狙うために慣性航法システム、GPSガイダンスが追加された精密誘導ミサイルになり、最大射程は90km。ウクライナで使用されているのがこれです。そして、3つ目が最大射程300kmの長距離誘導ミサイルのATACMSになります。どちらの車両も3名の乗員で運用されます。では、両車の違いは何になるのでしょう。

機動力の違い

M142 HIMARSとM270 MLRSの大きな違いの1つはまず機動力です。HIMARSは装輪式、MLRSは履帯式になり、まず車体の駆動方式が異なります。装輪式であるHIMARSの最高速度は84km/h、それに対し履帯式のMLRSは64km/hと速度が異なり、HIMARSはより早く移動が可能です。走行距離はどちらも480km/hと一緒です。車体重量はMLRSの25トンに対し、HIMARSは16.25トンと軽量、C-130輸送機に搭載でき、大抵の輸送機で輸送が可能です。MLRSも航空輸送は可能ですがC-17、C-5といった大型輸送機に限定されます。この展開力がHIMARS(高機動ロケットシステム)と言われる所以です。

火力の違い

M270 MLRSは最大12発のMLRS/GMLRS、または2発のATACMSが搭載できます。それに対しM142 HIMARSは軽量化、高機動化したことで火力が減少、M270 MLRSの半分の6発のMLRS/GMLRS、1発のATACMSしか搭載できません。

つまり、機動力に関してはM142 HIMARS、火力に関してはM270 MLRSが上ということになります。しかし、M270 MLRSは既に生産を終えているの対し、M142 HIMARSはまだ比較的新しく、拡張性の余地があります。古くなったM270 MLRSですが、2050年までの運用が決定しており、2022年7月には装甲とエンジンが強化されたM270A2が米陸軍に納入されています。

M142 HIMARSとM270 MLRSの違い
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