核も撃てる最強の自走迫撃砲「2S4チュリパン」

核も撃てる最強の自走迫撃砲「2S4チュリパン」
Photo Минобороны России

ロシア連邦陸軍が運用する自走迫撃砲「2S4チュリパン(2S4 Tyulpan)」、チューリップとも呼ばれるこの自走砲は240mm口径の迫撃砲を搭載し、現役の自走迫撃砲としては世界最強の威力を有しています。

半世紀以上前の兵器

2S4チュリパンは1960年代後半にウラル輸送機械製造工場(Uraltransmash)で開発されました。最初のプロトタイプは1969年に完成。1971年にソビエト軍に採用が決定。1975年よりソビエト軍に配備され、アフガニスタン侵攻の際の1985年に実戦デビューします。1988年までに588輌が製造されました。

240mmのM-240を迫撃砲を搭載

2S4チュリパンに搭載されている迫撃砲は第二次大戦中に開発が始まり、戦後の1950年に採用された曳航式迫撃砲M-240です。大型の迫撃砲というと120mmが一般的ですが、M-240の口径はその倍240mmを誇ります。120mm迫撃砲の砲弾重量は16kgですが、M-240の砲弾は130kgにものぼり。更に設置時の砲身の高さは5.25mにもなります。迫撃砲は通常、砲口から弾薬を装填する前装式ですが、M-240はその砲弾と砲身の設計から人の手で砲口から装填を行うのは無理なため、榴弾砲のように後方から機械装填する後装式を採用しています。そのため、迫撃砲としては発射速度が遅く、1分間で1発しか発射できません。

迫撃砲は移動時は車体上部に水平に搭載されています、射撃地点に着くと迫撃砲を起こし、車輛後方の地面に水平設置します。砲身の向きは車輛の後ろ方向になるので、車輛は敵陣地に背を向けて停める必要があります。砲身は俯仰角45 – 80度、左右各8度まで旋回できます。砲弾装填時は逐一、砲身を水平に戻す必要があり、これが発射速度が遅い要因でもあります。運用は5人で行います。

核砲弾も発射できる

通常弾は5段階の推進装薬システムを使用しており、設定によって初速を158〜362 m/sの間で調整し、距離800〜9,650mの範囲で着弾させます。ロケット推進剤を搭載した拡張弾を使うと射程は20kmまで拡大されます。この他、焼夷弾やクラスター弾、化学弾、レーザー誘導可能な精密誘導弾など戦況に応じて多様な砲弾を使用できます。車輛には標準弾で最大40発を搭載。そして、2S4チュリパンの最大の特徴が核弾頭を搭載した核砲弾を発射できる点です。射程9.5kmの3VB4と18kmの3VB11の2つがあり、その威力はTNT火薬換算で2キロトンの威力を有します。

ソ連崩壊後に倉庫送りに

2S4チュリパンはソ連崩壊後の1990年代半ばにほとんどの車輛が倉庫送りになります。更に冷戦終結に伴いロシアと米国は核砲兵部隊の活動を停止。これにより核砲兵部隊の活動も停止され、開発された核砲弾は全て廃棄されました。

2S4チュリパンの復活

核も撃てる最強の自走迫撃砲「2S4チュリパン」
Photo Минобороны России

しかし、1999年に第二次チェチェン紛争が始まると10輌が再びアクティブになります。更に近年、地下の指揮所、弾薬庫、鉄筋コンクリートで要塞化された陣地を破壊する方法として倉庫に眠っていた2S4チュリパンが現場に戻りつつあります。迫撃砲自体は第二次大戦時からさほど進化しておらず、その簡易的な砲システムは現代戦でも非常に有効です。とはいえ、連戦時の兵器である2S4チュリパンは陳腐化しています。シャーシは古いままですし、エンジンも500馬力しかありません。最初に復活した10輌は近代化改修が行われていますが、ほとんどの車輛が通信設備や現在では当たり前の射撃管制システム、観測装置が備わっていません。前線で運用するにはこれらシステムの近代化を行う必要があります。

Source
https://naukatehnika.com/samoxodnyij-minomet-2s4-tyulpan.html
https://ria.ru/20181022/1531064174.html
https://structure.mil.ru/structure/forces/ground/weapons/rvia/more.htm?id=10369937@morfMilitaryModel

核も撃てる最強の自走迫撃砲「2S4チュリパン」
最新情報をチェックしよう!
>戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車の情報を中心に発信するワールドタンクニュース

戦車、戦闘車、装甲車といった世界の軍の地上車両のニュース情報を発信します。

CTR IMG