TOS-1自走式ロケットランチャーは、世界で唯一の短距離射撃支援兵器で現在、ロシアしか製造していない。現在はロシア軍だけでなく、世界の複数の国の軍隊にも使用され、世界で最も売れている自走式の多連装ロケットランチャーの一つだ。
カチューシャの系譜を継ぐ兵器
かつてソ連にはカチューシャと呼ばれた自走式多連装ロケット砲「BM-13」があった。トラックの荷台に積まれた多連装ロケット砲からおびただしい数のロケット砲を打ち出し、発射時の異様なロケットの羽音から「スターリンのオルガン」と呼ばれ恐れられた。TOS-1はその系譜を継ぐロケットランチャーだ。
TOS-1 Buratino
TOS-1はT-72戦車をベースにしたロケットランチャーシステムで、1979年のアフガニスタン侵攻で渓谷に潜む近距離の敵を攻撃するために開発された。最初のTOS-1は「 Buratino(プラチーノ)」と呼ばれオムスクの輸送工学設計局で極秘扱いで開発製造された。 T-72のシャーシに30個の砲身を備えたランチャーを載せ、KrAZ-255Bベースの装填補給車両とセットにされたこのシステムは1980年にテストに合格、ソビエト軍による採用が決定した。TOS-1の無誘導ロケットは軽装甲車や車両の装備を無力化し、焼夷剤を使って建物に火をつけて破壊する。そして30発の一斉発射を行う事で破片や衝撃波によって一帯の敵の兵力を破壊することを目的としていた。射程は500m~3500mと短く榴弾砲では狙えない近中距離を対象としていた。しかし、敵との距離が近くなるので近距離での応戦ができないTOS-1は歩兵や戦車と行動を共にする必要がある。
照準方法は直接照準で乗務員は、自身の目と電気駆動装置の助けを借りて、車を離れることなくターゲットにランチャー向けるためのすべてのアクションを実行する。標的への発射体の飛行軌道は、発射条件の正確な計算と、光学照準器、レーザー距離計、ロールセンサー、および電子弾道コンピュータで構成される特別な射撃管制システムの計算が必要で停車してから発射するまで時間がかかった。
TOS-1A Solntsepek
TOS-1A Solntsepek(ソルトセペック)は2001年に開発されたTOS-1の改良版だ。シャーシはT-72Aに代わり、砲身数を24発に削減、射程を6000m(最短600m)に延長した。装甲は強化されB-32装甲貫通弾から弾薬を保護する装甲揺動部が取り付けられた。装填補給車は同じくT-72AベースにしたTZM-Tに代わった。弾道コンピューター、レーザ距離計、追尾照準器からなる火器管制装置が自動でランチャーを標準に向ける。発射の制御は自動的に行われ、車両が停止した瞬間から目に見える目標に対して発射する準備ができるまでの時間は90秒である。これらの射撃システムは間接射撃、直接射撃どちらも行う事ができる。数秒間続く完全な一斉射撃は、40,000平方メートルの範囲の敵軍を一気に破壊することができる。
使用するBM-1ロケットには熱気化弾頭が搭載され、弾頭は爆発すると爆発性のエアロゾルをターゲットに吹き付け、それが隙間を貫通して爆発する。このようにして発生する爆風は、従来の弾薬を使用した場合の2倍の強さになる。さらに、爆発中には高温の雲が現れ、爆発の震源地の温度は摂氏800度に達し、爆風と高熱高圧で全てを焼き尽くす。2020年には10kmの射程を誇るロケットも開発された。しかし、最短射程も1.6㎞と伸びたため近距離への攻撃は不可能になる。
トランペッター 1/35 TOS-1 ブラチーノ(多連装サーモバリック弾頭ロケット弾ランチャー) 05582
製造元のRostec State Corporationの子会社であるJSC RosoboronexportとJSC Omsktransmashは最近、海外の顧客に向けて実演を行っており、販売を拡大しようとしている。