戦車の母国であるイギリスは、第一次世界大戦から戦車開発をリードしてきました。イギリス陸軍がこれまで使用してきた戦車は全て国産戦車です。しかし、その伝統を破り、ドイツのレオパルド2戦車の購入を検討しています。
チャレンジャー2は老朽化
現在の英陸軍の主力戦車(MBT)はイギリスのヴィッカース・ディフェンス・システムズ(現:BAEシステムズ)によって開発された第三世代のチャレンジャー2戦車です。1994年7月に初めて納入され、2002年までに408輌が英陸軍に納入されています。
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改修案ブラックナイト
チャンレンジャー2は最初に納入されたもので25年以上、最後の車輛でも20年近く経過しており、老朽化が進んでいます。その間にも世界の戦車は進化し、現在は3.5世代、第4世代の戦車が主流です。チャレンジャー2は2035年までの運用が決定しており、それを見据えた中期的な寿命延長のための近代化アップグレードを検討する必要があります。そのため、2016年12月、英国国防省はBAEシステムズとドイツのラインメタルの二社に近代化モデル 「チャレンジャー2LEP」の改修を行う契約に署名。2018年10月には「ブラックナイト」よ呼ばれる詳しい改修案が提示されます。完全にデジタル化された電子アーキテクチャ、指揮官と砲手のための新しい昼夜カメラ、レーザー警告システムとアクティブ保護システム、そして、ラインメタルL55 120mm滑腔砲を搭載した完全に新しい砲塔の開発が示されました。改修によって、レオパルト2や米国のエイブラムスと同等且つ、特定の機能で優れることになると国防省は主張します。
改修が高額
しかし、この改修案は高額で時間もかかるため、二の足を踏んでいます。そこで上がってきたのが、ラインメタル社が開発するのドイツのMBT「レオパルト2」の購入です。チャレンジャー2を採用しているのは英国とオマーンの2カ国のみで、オマーンが所持しているのは38輌でほぼ英国専用の戦車といっていい代物です。生産台数少ないので単価非常に高く、改修にも費用が掛かります。それに比べて、レオパルト2はドイツ軍の他にオーストリア軍やスペイン軍、カナダ軍など約20カ国が採用しており、1000輌以上が生産されています。そのため、製造コストが低く、改修も頻繁に行われています。最新モデルは「レオパルト2A7+」です。今後、15年あまりの運用を考えた時、改修するよりも、レオパルト2の新車を購入した方が安く済むのではという算段です。
チャレンジャー2は第三世代の中でも初期のものであり、他の第三世代戦車と比べて能力を劣るとされており、特に最大速度56km/hは他のMBTが平均70km/h前後なのと比べる鈍足で、致命的な欠点を抱えています。
これらの事情と島国であるイギリスは地上侵略されるリスクが少ないこともあり、戦車戦力の見直しが進んでいます。今年9月には英陸軍が将来、戦車を廃止するという報道もなされました(国防省が否定)。
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戦車の母国であるイギリス戦車が今後、もしかするとなくなるかもしれません。