メルカバ戦車が複数破壊、最強の盾と言われたトロフィーAPSはどうしたのか?

メルカバ戦車が複数破壊、最強の盾と言われたトロフィーAPSはどうしたのか?

戦闘が激化するパレスチナ・ハマスとイスラエル国防軍(IDF)の戦闘。IDFは主力戦車であるメルカバを投入しているも、SNSにはメルカバがハマスの対戦車兵器にやられる姿が複数上がっている。メルカバMk4には対戦車兵器の直撃を防ぐ世界最高と評価される”アクティブ保護システム(APS)”「Thropy(トロフィー)」が搭載されている筈なのだが、それが突破されているのだ。

トーチカのような場所に鎮座するIDFのメルカバMk4戦車。しかし、次の瞬間、対戦車ロケットらいしきものが直撃。乗員の生命を守る生存性においては世界一と言われた同戦車だが、後ろのハッチから火を噴くなど大炎上した。乗員の生死は不明だが、この燃え方で中に居れば被害は免れない。

こちらの映像もメルカバMk4が砲塔後部に直撃を受けている。どちらの映像も、メルカバMk4に搭載されている筈のASP「トロフィー」が起動しているようには見えない。

トロフィーAPSとは

「Trophy」はイスラエルの軍需企業ラファエル社によって開発された世界で唯一完全に統合され、戦闘で証明されたアクティブ保護システム(APS)だ。主にロケットやミサイル、迫撃砲などの対装甲兵器、対戦車攻撃の脅威から車両を保護する。搭載されたレーダーシステムは攻撃の脅威を即座に検出、自動的に実行されるインターセプターによって飛翔体を撃墜、直撃を防ぐ。同システムは2011年にイスラエル国防軍のメルカバⅣ主力戦車に最初に装備され、既にパレスチナやレバノンとの紛争における実際の戦闘で検証されており、RPG-7などの対戦車ロケットを撃墜するなど、その有効性を示してきた。発射地点を検出することもでき、速やかなカウンターを可能にする。これまで5,000回以上のフィールドテストに成功し、車体、搭乗員の損害無しに1,000,000時間以上の運用時間を達成している。最新のメルカバMk4は全車両にトロフィーが搭載されている。

奇襲時、トロフィーは起動していなかった

メルカバの撃破の様子が最初に投稿されたドローンによる真上からの攻撃だった。トロフィーのメーカーサイトには対ドローンについては明記されていなかったので、ドローンに対しての有効性は不明だ。トロフィーの開発時、まだドローン攻撃は主流でなかったため、このような攻撃は考慮されていなかったのかもしれない。また、ハマスの侵攻が始まった10月7日のガザ地区国境沿いの戦闘は奇襲のため、IDFのメルカバはトロフィーのスイッチを切っていたとも言われている。冒頭に紹介した映像は戦闘が始まって2日後にSNSに拡散されたものだ、戦闘の日付は不明だ。戦闘2日目の10月8日時点でIDFは最大14両のメルカバ戦車を鹵獲、放棄、破壊、損傷などで失ったという分析結果があるが、最前線でガザ地区には最新のメルカバMk4が多数配備されており、被害の多くが同車両だ。破壊、損傷にあった車両で全てトロフィーが起動していなかったのは分からない。

トロフィーはアメリカのM1A2エイブラムスSEPv3、ドイツのレオパルト2A7に搭載されており、レオパルト2A8、イギリスの次世代戦車チャレンジャー3の標準装備になることが決定しているが、もし、今回、トロフィーが前評判通りの性能を発揮できていなかったとすれば、これらに影響してくるかもしれない。

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