ロシアは鹵獲したドイツのレオパルト2A6を戦車工場に運び、分析のために解体する

ロシアは鹵獲したドイツのレオパルト2A6を戦車工場に運び、分析のために解体する

ロシア唯一の戦車メーカーであるウラルヴァゴンザヴォート(UVZ)は自社工場にウクライナで鹵獲したドイツ製のレオパルト2A6戦車を運び込む様子を公開した。同戦車はここでロシア軍が西側製戦車の特徴や長所、弱点を分析するために解体される。

ロシア軍は今年3月初めにウクライナ東部の激戦地だったアウディウカでレオパルト2A6を鹵獲した事を発表。4月には実際に鹵獲したレオパルト2A6の映像を公表し、トラックに載せてモスクワに向けて運ぶ様子が目撃される。そして、5月にはモスクワの戦勝記念公園にウクライナでの戦利品と展示され、一般公開されていた。映像からもレオパルト2A6自体の損傷はそれほどでもない事が分かり、砲身に損傷が確認できるが、状態はよく、修理すれば再出撃可能な状態に見受けられる。もちろん、ロシア軍がこれをそのまま展示品として置いておくわけがなく、車両はロシア唯一の戦車メーカーであるウラルヴァゴンザヴォート(UVZ)に輸送された。同社は工場に到着するレオパルト2A6の動画を公開。この動画が公開されたのは10月初めだが、実際に撮影されたのがいつなのかは不明だ。

UVZは公式声明で「専門家らがこの60トンの車両を特殊なジャッキに載せて、レオパルト2A6のユニット、システム、アンセンブリの分解を開始。検査を実施し、結果を分析後、様々なシステムと車両の軍事技術について専門家が評価を下す」と述べている。おそらく、A6の装甲やパワーパック、サスペンション、射撃管制装置、スタビライザー、光学電子機器、主砲の120mm L55が入念に分析されるものと思われる。

レオパルト2A6

既に100両⁉ウクライナに提供されるレオパルト2戦車のバージョン
Bundeswher

ドイツ製のレオパルト2A6戦車は今回、ウクライナに供与されている西側製戦車では最も新しいモデルだ。1970年代に開発されたレオパルト2戦車の3つ目のメジャーアップデート版として2001年に登場したのがレオパルト2A6になる。同じくウクライナに供与されているイギリス製のチャレンジャー2が1994年、アメリカのM1A1エイブラムスが1984年に就役した事と比較すれば、レオパルト2A6が近代的な車両であることが分かる。

A6は主にドイツ軍とオランダ軍のために開発されたバージョンで、オランダ軍では退役しているがドイツ連邦軍では現在も配備中だ。前身のA5から追加された砲塔前面部のくさび形の空間装甲ボックスにより防御力は向上。そして、A6では、A5までの120mm L/44滑腔砲から、より砲身の長い120mmL/55 滑腔砲に変更されている。これにより、最大射程は3500mから4000m以上に伸びており、その射程と精度から「スナイパー」とも称される。この他、射撃管制装置や通信コマンドシステムも改良されている。ドイツは225両あったレオパルト2A5をA6にアップグレードしており、ドイツ軍が保有する戦車の中で最も多数を占めている。

ドイツのショルツ首相はウクライナの反攻作戦を支援するため2023年1月、各国が保有するレオパルト2のウクライナへの提供を承認、各国が旧式のレオパルト2A4を供与する中、開発生産元であるドイツはレオパルト2A6戦車のウクライナへの提供を正式に表明し、18両を供与した。全車両、ウクライナ軍最強の機械化旅団「第47独立機械化旅団」に編入されている。2023年6月に始まった大規模反攻作戦では、ザポリージャの前線に早速投入されている。性能が高いこともあり積極的に前線に投入されたが、その分、損失は多く、既に13両を失ったとされており、壊滅に近い状態だ。ドイツ政府はレオパルト2A6の追加供与は行わない予定だ。

第4世代戦車の先駆者とされるT-14アルマータ、それに近い性能を持つT-90Mを開発したロシアにとって、2001年に登場したレオパルト2A6の技術がどれだけ参考になるかは不明だ。レオパルト2は既にA7が登場、その次のA8の開発にも着手している。ドイツとしても仮に鹵獲されても軍事技術の流出は軽微と考えてA6を供与していると推測される。とはいえ、レオパルト2はヨーロッパで最も採用されている戦車でNATOの主力戦車。A6はドイツ軍の主力だ。

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