ロシア軍の司令官が軍のT-90戦車のエンジンを盗んだ容疑で逮捕されました。
ロシアメディアのコメルサントの4月26日の報道によれば、ロシア軍南部軍管区の技術支援部門の装甲サービスの責任者であるアレクサンドル・デニソフ大佐は2021年11月から2022年4月にかけて、組織化された窃盗グループの一員として、2,050万ルーブル、日本円で3,500万円相当の戦車エンジンを盗んだ容疑で逮捕されました。少なくとも7基のV-92C2 ディーゼル エンジンを盗んだとされており、このエンジンはV字型の4ストローク12気筒ディーゼルエンジンで、戦車専用エンジンとして国内で生産されているもので、ロシア軍の主力戦車の中でも比較的新しいT-90系とT-72の近代化モデルであるT-72B3に使用されるエンジンです。彼の窃盗のお陰でロシア軍は戦車7両の戦力を喪失したわけです。
デニソフ大佐は無罪を主張しており、彼の弁護士は彼が長い間に前向きに軍務に就き、ウクライナでの特別軍事作戦にも参加、彼の評価と功績に対し、捜査は不公平であると無罪を主張。 しかし、裁判所は彼の声明を受け入れておらず、最高で懲役10年の実刑に直面する可能性が高いと報じています。
ロシア軍内部では長年腐敗が進んでおり、物資の横流しは以前から横行しています。2019年にはデニソフ大佐と同じ南部軍管区の装甲サービスの供給部門の責任者だったドミトリー・セドフ中佐、軍事ユニット33744の装甲サービスの元責任者、ヴィタリー・ウスペンスキー大佐、装甲資産倉庫の元責任者イゴール・シェフクノフが同様に軍事車両のエンジンを盗んだと有罪判決を受けています。
ウクライナ侵攻で戦車の損失が多くなるとロシア軍第4機甲師団の第13機甲連隊司令官は倉庫に眠っていた予備戦車を戦線に投入しようします。しかし、車両を確認したところ、備蓄されていた10両の内、9両が使用できない状態であることが判明します。なぜなら、電子機器やエンジンやらが盗まれていたからです。この事実を知った司令官は責任を感じたのか、自殺したとされています。ロシア軍はウクライナに侵攻したことで、レーションが賞味期限切れだったり、爆発反応装甲の中身が木片、ボディアーマーにプレートが入っていないなど、あると思った筈の軍事物資がないということが各方面で明らかになっており、これらは物資の横流し、もしくは司令官や兵站担当者が調達費用を中抜きしたとされています。また末端の兵士はウクライナに侵攻中も車両から燃料を抜き取って、酒と交換するなどしており、今回の逮捕は腐敗が蔓延るロシア軍の氷山の一角に過ぎません。
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