ロシア最大の国営軍事企業ロステック社のCEOは、ウクライナで鹵獲したアメリカ製のM1A1エイブラムス戦車とドイツ製のレオパルト2戦車を厳しく評価し、ロシア製戦車の方が性能的に優位であるという見解を表明した。
Сергей Чемезов: «Доверия к западным партнерам больше нет и не будет никогда»
ロステック社のCEOであるセルゲイ・チェメゾフ氏は、最近の雑誌インタビューにおいて、ドイツのレオパルト2戦車、及びアメリカのM1エイブラムス戦車に対し、否定的な評価を示した。
レオパルト2戦車に対する評価
チェメゾフ氏はレオパルト2戦車について問われ、以下の見解を示した。
ドイツのレオパルト戦車は高い水準で製造されており、最新の部品、射撃管制システム、強力なエンジンを備えている。しかしながら、温度制限という特異な制約が存在する。革新的な設計上の解決策は見当たらず、レオパルトから学び応用できる点は皆無である。
ロシア軍はウクライナの戦場でレオパルト2A4およびA6を鹵獲し、持ち帰って分析を実施している。ロステックとロシア軍はレオパルト2に関して、ドイツ製らしい精密さや射撃精度などの技術面は評価しているものの、後部弾薬庫が脆弱であり、被弾時の誘爆リスクが高い点を指摘している。レオパルト2は乗員スペースと隔壁で区切る形で砲塔後部に弾薬を格納している。これは乗員保護の観点からは合理的であるが、砲塔後部への直撃を受けると弾薬が誘爆し、車体が完全に破壊される事例が確認されている。
また、西側戦車に共通する欠点として、重量過多、燃費の悪さ、メンテナンスの複雑さを指摘している。レオパルト2A6の戦闘重量は60トンを超え、特に不整地(泥濘地・湿地)や老朽化したインフラ(狭い橋や道路)では移動が制約される場合がある。ウクライナでは、春の泥濘期に苦戦している状況が見受けられる。高度な電子機器やエンジン、冷却装置が搭載されている一方で、それらの整備や補給には高度な専門的スキルが要求され、前線での修理は困難である。軽微な故障や損傷であっても、後方へ輸送して整備が必要となるケースが多い。
ウクライナ軍は計71両のレオパルト2戦車を受領したが、そのうち少なくとも40両が破壊ないしは損傷により失われている。ドイツとポルトガルから受領した18両のレオパルト2A6に関しては、比較的新しいバージョンであるにもかかわらず13両が失われており、全滅に近い状態である。
M1A1エイブラムス戦車に対する評価
チェメゾフ氏はM1エイブラムス戦車について、以下の見解を示した。
専門家たちはアメリカのエイブラムスも視察したが、全体としては興味深い機体であるものの、特筆すべき点は見当たらない。
レオパルト2でも指摘されたことだが、ロステックやロシア軍関係者は、M1エイブラムスが非常に重く、特に湿地や泥地、橋梁に負荷をかける環境では機動性に劣ると批判している。エイブラムス戦車の重量はゆうに60トンを超える。そのため、橋梁・道路インフラへの負担が大きく、泥濘地や都市部の狭い道路などでは行動が制約される。高重量のため、回収や修理も難しく、損傷時の後方移送が困難な場面も多い。実際、損傷が軽微ながら放棄されたエイブラムスがウクライナで確認されている。
ディーゼルエンジンが多い戦車において、エイブラムスはガスタービンエンジンを採用している。滑らかな加速、寒冷地での始動性においてメリットがあるものの、燃費が非常に悪く、アイドリング状態でも大量の燃料を消費する(1時間あたり約38リットル以上)。したがって、補給の負担が非常に大きく、特に前線では兵站が課題となる。ガスタービンは非常に高温の排気を出すため、赤外線センサーに捕捉されやすい。敵の熱探知兵器やドローンによる索敵の対象になりやすく、ステルス性に欠けると指摘されている。レオパルト2と同様、西側の複雑なエンジン、電子機器を搭載しているため、メンテナンスには専門性の高い技術者と専用部品が必要であり、前線での修理が難しい。
ウクライナ軍はアメリカから31両のM1A1エイブラムス戦車を受領したが、これまでに少なくとも22両を失っている。
西側製戦車では他に、イギリスがチャレンジャー2戦車14両を供与している。2両が破壊されたものの、ロシア軍には鹵獲されておらず、チェメゾフ氏はチャレンジャー2について、以下の見解を示している。
好奇心からイギリスのチャレンジャー2も視察してみたいと考えている。これは「鍋(Pot)」のような車両であり、実戦にはあまり適していないことは明らかである。多くの外国製機体の主な問題点は、設計の複雑さとメンテナンスの手間である。
T-90M (©Rostec)
西側製戦車を厳しく評価したチェメゾフ氏だが、自国のT-90M戦車については、以下のように述べている。
西側戦車と我々の戦車を比較すると、T-90Mプラルィヴの優位性は火力、装甲、機動性にある。誘導弾と全方位の動的防御により、より長い「腕」を持つ。数十機のウクライナの無人機が本車に命中したにもかかわらず、戦闘能力を維持した事例も存在する。
T-90Mはロシア軍の主力戦車としては最も新しいモデルであるが、初期に配備された20両は早々に全滅し、200両を追加生産したものの、これまでに137両を失っている。
ブラッドレー歩兵戦闘車についても評価
また、チェメゾフ氏はアメリカのブラッドレー歩兵戦闘車についても評価している。
ブラッドレーを称賛する専門家もおり、我々の専門家もその一人である。しかし、私としては、これは過度な喜びであると考える。我々はブラッドレーを様々な角度から検討した。防御力と兵員室の利便性という点では利点があるものの、我々の兵器がアメリカの歩兵戦闘車とその乗組員、兵員を破壊することを妨げるものではない。
ブラッドレーには重大な弱点がある。それは走破能力の問題である。そのため、通常はオフロード、つまり野原を走行することができない。黒土に埋もれてしまい、その巨大なサイズゆえに格好の標的となる。防御力を強化しても結果が同じであれば、一体何の意味があるのか。ウクライナに納入されたブラッドレーはほぼ全て破壊された。歩兵戦闘車は戦車ではないことを忘れてはならない。歩兵戦闘車は高速で機動力があり、走破性があり、橋や道路を使わずに川を泳いで渡ることができなければならない。我が国の歩兵戦闘車はこれができるが、アメリカの歩兵戦闘車はできない。
ロシア国内でもブラッドレーを評価する人がいる中で、チェメゾフ氏はこれを否定した。
ロステックは自社のT-90Mなどと比較して、西側戦車の設計思想を「旧式」または「非効率的」とし、自国製品の優位性を強調したが、同氏の発言は当然ながらロシア国内に向けた政治的、軍事的なプロパガンダな側面が強く、客観的かつ正当な評価とは言えない。