アメリカ陸軍は、歩兵旅団戦闘チームの機動性、保護、および直接射撃能力を向上させることを目的とした歩兵旅団戦闘団(Infantry Brigade Combat Team:IBCT)用の機動防護火力「Mobile Protected Firepower(MPF)」の新しい軽戦車として、ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社製の車両を選択しました。
MPFはBAE Systems(BAE)とGeneral Dynamics Land Corporation(GDLS)の二社間で争われていました。両社は2018年12月に米陸軍と開発契約を締結、それぞれ最大3億7,600万ドルの資金を受け取り、プロトタイプ12両を生産。BAE社は1996年に設計されたM8 AGS軽戦車の改良版を開発、GDLSはGriffin II(グリフィン2)という新しいコンセプトの車両を開発しました。2020年3月と4月にプロトタイプが米陸軍に納品され初期テストがスタート、2021年1月4日からは第82空挺師団にて、より実戦的な性能評価試験が始まっていました。そして、この度、評価の結果として米陸軍の新しい軽戦車(MPF)としてGDLSのGriffin IIが採択され、米陸軍は11億4000万ドルの契約を授与しました。
この契約の下、GDLSは計96両の車両を製造、初期ロッドは24両を予定しており、最初の車両は19ヶ月後に納車される予定です。また既に納入されているプロトタイプ12両の内8両は実戦用に改修されます。2025年度の第4四半期までに大隊規模の42両を納入する予定で、2025年にフルレートの生産を開始。米陸軍は最終的に504両の調達を計画、30年間の運用を予定しており、2035年までに全量の調達を完了させることを目指しています。
MPFとは
昨今は非対称戦争に代表されるように戦車同士の戦闘は少なくなり、軽車両といったライトターゲットが多く、軽戦車の火力、装甲で十分に対応できます。さらに現代戦では展開力と機動力が求められます。主力戦車(MBT)のM1A2エイブラムスの攻撃力は性能過多であり、その重量と大きさから輸送には時間とコストがかかります。
そこで米陸軍はC-130、C-17といった複数の輸送機に搭載できる軽量の戦車”移動式保護火力”「Mobile Protected Firepower」(MPF)との開発を計画。MPFで開発される軽戦車の重量は30トン代になります。30トン代というと、第二次大戦ではM4シャーマンといった中戦車に分類される重量になり、軽戦車はそれ以下のことを指していましたが、軽・中・重といった分類が無くなり、MBTに統一される現代において、30トン代の戦車は軽戦車という形に分類されるようです。これはM1A2エイブラムス戦車の約半分になります。軽量化された分、幅広い輸送機への搭載が容易になり、迅速な輸送、空中投下が可能になります。このような軽戦車の採用は1994年に退役したM551シェリダン以来になります。
GDLS Griffin II(グリフィン2)
グリフィン2はエンジンと操縦席が前面にあり、砲塔が車体後部に位置する自走砲のようなレイアウトが特徴の車両です。高性能パワーパックと高度なサスペンションを備えた新しく設計された軽量シャーシ、砲塔部分には既存の戦車兵が使い慣れたM1A2エイブラムスSEPV3戦車をベースにした105mm砲1門にCITV (車長用独立熱線映像装置)を備えています。ハッチ部分には12.7mm重機関銃が1基搭載されています。搭乗員は運転手、砲手、戦車長、そして装填手の4人になります。重量は38トンと軽戦車扱いになります。
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