
テキサス州エルパソ出身の22歳の元米陸軍兵士が、M1A2エイブラムス戦車に関する国家機密情報をロシア政府に提供しようとした罪で逮捕・訴追された。この情報は、彼がロシア市民権を得る見返りとして提供されたとされる。
Active-Duty Soldier Arrested and Charged with Espionage and Export Violations
アメリカ司法省は8月6日、テキサス州エルパソ在住のテイラー・アダム・リー容疑者(22歳)を、外国の敵対国に国家防衛情報を送信しようとした容疑と、規制対象の技術データを無許可で輸出入しようとした容疑で逮捕したと発表した。
事件の経緯
裁判所文書によると、リー氏はフォートブリス基地に駐留する現役の米陸軍兵士であり、最高機密(TS)/機密区分情報(SCI)のセキュリティクリアランスを保有していた。2025年5月頃から逮捕に至るまで、リー氏は自身の米陸軍における立場を利用し、米国の防衛情報をロシア国防省に送信しようと画策していた。
2025年6月、リー氏はロシア連邦への支援を申し出、M1A2エイブラムス戦車に関する輸出規制対象の技術情報をオンラインで送信したとされる。その際、彼は「米国は私が彼らの弱点を暴こうとしたことに不満を抱いている」と述べ、「現時点では、私がロシア連邦に何らかの形で支援にあたるのであれば、喜んで支援するだろう」と付け加えたとされる。
7月には、リー氏とロシア政府代表者とみられる人物との直接会談が行われた。この会談で、リー氏はその人物にSDカードを渡したとされている。リー氏は、SDカードに記録されていた文書と情報の詳細な概要を説明し、その中には米軍が使用する装甲戦闘車両とM1A2エイブラムスや戦闘作戦に関する文書と情報も含まれていた。これらの文書の中には、リー氏には提供権限のない管理下の技術データが含まれていた。SDカード内のその他の文書は、管理下非機密情報(CUI)としてマークされ、バナー警告や情報発信制限が設けられていた。リー氏は会談中にSDカードの情報が機密情報であり、おそらく機密扱いであると述べた。
7月の会談後、リー氏はM1A2エイブラムス戦車に搭載されていた特定のハードウェアを入手し、これをロシア政府に提供することについても協議を進めていた。そして2025年7月31日、リー氏はそのハードウェアと思われるものをテキサス州エルパソの倉庫に届けた。その後、リー氏はロシア政府関係者と思われる人物に「任務完了」と記したメッセージを送信したという。ウクライナ軍は現在、アメリカとオーストラリアから供与されたM1A1エイブラムス戦車を使用。M1A2より一つ前の世代のモデルだが、近い能力を持っている。
国家安全保障担当のジョン・A・アイゼンバーグ司法次官は、このような重大な違反行為が厳正に処罰されるよう、引き続き法執行機関および軍のパートナーと連携していくと述べた。この事件は、国家安全保障に関わる機密情報の取り扱いがいかに重要であるかを改めて浮き彫りにするものであり、同様の事案に対する米国の厳しい姿勢を示すものとなる。