アメリカは方針を変え、ウクライナへの軍事支援として劣化ウラン弾の提供を予定しています。
13日のウォールストリートジャーナルの報道によれば、アメリカ政府と国防省はウクライナに供与予定のM1A1エイブラムス戦車の装備について、数週間に渡る議論の上、劣化ウラン弾も合わせて供与する方針であることを米当局者が明らかにしました。アメリカは3月時点では「劣化ウラン弾を供与しない」という方針を示していました。イギリスが既にウクライナに供与したチャレンジャー2戦車の砲弾として劣化ウラン弾を提供することを表明しており、イギリスに続いて2カ国目になります。
劣化ウラン弾とは
劣化ウラン弾は対装甲用の戦車砲弾として米軍内では広く使用されている砲弾です。その名の通り、弾頭に劣化ウランを使用しています。ウランは自然界で最も密度が濃い物質で、その比重は鉄の2.5倍、鉛の1.7倍とされ、非常に強固な物質で、貫通力が高く、最も装甲が厚いとされる戦車の正面装甲を貫通する威力を持っており、ロシア戦車を数Km先から撃破することが可能です。
しかし、デメリットもあり、劣化ウラン弾はウランを濃縮した後の放射性廃棄物を使用しており、弾頭には微量の放射性物質が含まれています。通常使用にはそこまで問題ありませんが燃焼時に発生するエアロゾルを吸い込むことで汚染にさらさせるリスクがあるとされます。実際、湾岸戦争では兵士が体調を崩すことが頻発、それが劣化ウラン弾と影響とされ、社会問題になりました。土壌も汚染されることになり、米政府内では提供に反対意見もあります。放射能の影響は無いという研究結果もありますが結論には至っていません。
また、これら劣化ウランを用いた兵器は米エネルギー省の管轄下にあり、輸出規制の対象となっているため、基本は国外に輸出することができません。米軍のエイブラムス戦車には劣化ウラン装甲が使用されていますが、この規制のため、輸出される全てのエイブラムスは劣化ウラン装甲が取り除かれています。ウクライナに提供される31両のM1A1エイブラムスも劣化ウラン装甲は取り除かれます。この規制がクリアできるのかが、今後の課題になってくるでしょう。
US Armyアメリカからウクライナへ、軍事支援として提供予定の31両のM1エイブラムス戦車。アメリカ国防省は当初、現在の米陸軍の主力であるM1A2エイブラムス戦車をウクライナに提供すると表明していましたが、3月末に声明で前モデル[…]
戦車の正面装甲を貫通できる劣化ウラン弾の提供にロシアは猛反発しています。イギリスが劣化ウラン弾を提供すると発表した際は、「核兵器の提供だ」と反対。対抗策として核兵器の使用も辞さないと脅しをかけました。実際、これに対抗する形でベラルーシに核兵器の配備を決定しており、今回もロシアの猛反発が予測されます。劣化ウラン弾は核兵器として定義されておらず、ロシア軍も劣化ウラン弾を使用しています。
Source
U.S. Set to Approve Depleted-Uranium Tank Rounds for Ukraine – WSJ