インド陸軍は2400両のT-72戦車を退役させるのか?

インド陸軍は2400両のT-72戦車を退役させるのか?

インド陸軍は現在、2,414両のT-72M Ajeya戦車を保有しているが、老朽化しており、後継の次世代戦車である将来即応戦闘車両FRCVの導入が決定している。そこで、問題になるのが、この膨大な数のT-72の処遇だ。ロシア・ウクライナ戦争など、世界が混沌とする中、インドはジレンマに陥っている。

インド国防省は2023年6月に老朽化したT-72M Ajeya戦車に代わる次世代戦車である将来即応戦闘 車両FRCV(Future Ready Combat Vehicle)の開発と生産を承認した。ロシアとウクライナとの戦争で主力戦車が現代の戦場でも極めて重要であることが証明されていることから、インド陸軍は将来即応戦闘車両(FRCV)プロジェクトの下で新世代の「未来型戦車」を調達することを検討していた。2030年からの導入を予定しており、まずはプロトタイプ開発に最大70%の政府資金が提供される。初期生産で590両が予定されおり、最終的には1700両以上が生産される可能性があるとされている。それに伴い、2400両あるT-72M Ajeya戦車は2030年から段階的に退役する。

T-72は780馬力のディーゼル エンジンを搭載し、複合装甲、オートローダー、125mm 2A46M滑腔砲を搭載するソ連で開発された第2世代戦車で、T-72M Ajeyaはそのインド版だ。1976年にソ連と調印された協定に基づき、1978年に最初のバッチがインドに納入され、1981年にインド陸軍に正式採用され、2,418輌の調達契約が結ばれた。その後、ライセンス供与受け、1984年に国内工場が稼働、国内生産に切り替えられ、1990年まで生産が行われた。国産の主力戦車Arjun(アルジュン)を開発していたこともあり、近代化改修を行わない予定だったが、開発と量産が遅延したため、1,800~2,000輌が火器管制システム/サーマル イメージャー、DRDO爆発反応装甲を追加する改修(T-72M1)を行っている。これにより、耐用年数は10~15年延びたが、その改修も1999年に終えた98両が最も新しく、ほとんどの戦車が改修から30年が経過。メーカー推奨の耐用年数は30年であり、老朽化しており、敵対するパキスタン、中国の主力戦車に対抗する必要な能力を備えていない。

2030年から後継のFRCVの導入が決まってはいるが、それまでにはまだ6年もある。また、インドの国産兵器開発がこれまで計画通りに進んだことはほとんどなく、毎回遅延しており、数年の遅延が見込まれ、まだ10年ほどは現役で稼働させる必要がある。陸軍は、このギャップを埋めるために、新しいエンジン、射撃管制システム、およびその他の機能をアップグレードすることにより、1,200両以上のT-72の耐用年数の延長、強化を計画している。しかし、それに必要なパワーパックやスペアパーツのロシアからの入手がロシア・ウクライナ戦争によって困難になっている。このまま運用続けるのか、退役させるのかジレンマに陥っている。退役させるとしても2,400両は膨大な数だ。1960年代に開発されたT-72戦車だが、まだ現代戦に通用する能力を持っており、ロシア・ウクライナ両軍も主力戦車の一つして運用している。改修すれば第三世代戦車と等しい能力を持たせることも可能で、引き合いは多い。ロシア・ウクライナ共に喉から手が出る程欲しい車両だ。

インド陸軍はT-72の他に1500両のT-90S戦車を保有しており、ロシアからライセンス供与を受け、国内生産を続けている。最終的に2000両を生産する予定だったが、T-72の近代化と同様、ロシアから必要なパーツの入手が難しくなっており、今後の量産の見通しは立っていない。国産のアルジュン戦車はドイツ企業の協力を受けて開発され、120mm滑腔砲を採用するなど西側基準の戦車になり、ロシアの影響を受けないが、2004年から生産が始まって20年ほど経つがトラブル続きでまだ200両ほどしか生産できていない。現在もエンジンの問題で生産は遅延している。

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