BTR-Tは古くなったT-54/55を流用した歩兵戦闘車両です

BTR-Tは古くなったT-54/55を流用した歩兵戦闘車両です
写真 ロシア連邦軍

T-54 / 55シリーズの主力戦車は、ソ連が第二次世界大戦後に開発した第一世代主力戦車で世界最多の生産量を誇る戦車の1つとして、世界中に数万台が流通しました。半世紀が過ぎた現在では多くがスクラップ、行動不能に陥っていますが、近代化改修された車輛も多く未だ多く国で使用され続けています。T-54/55発祥の地であるロシア国内にも数多くの戦車が残っていましたが、ロシアはそれを改造し、BTR-T重歩兵戦闘車として再利用しています。

チェチェン紛争をきっかけに開発

​ロシアがT−54/55を改造した理由は1970~1990年代の紛争にあります。この間にロシア(ソ連)はアフガニスタンとチェチェンで紛争を経験します。特にチェチェンとの二度の紛争では装甲戦闘車がことごとく破壊されロシア軍は多くの死傷者を出し、市街地での軍事作戦における重歩兵戦車の役割を認識させされます。そこで​古くなったT-54/55(写真上)に目を付けます。​T-54/55戦車は既に第一線から退いていましたが、原産国のロシアは多数のT-54/55戦車を保存していました。

イスラエルのアチザリット重装甲車両を参考にした

​BTR-Tの改造は完全にゼロから始めるのではなく、実は既に海外では事例がありました。イスラエル軍は中東戦争でエジプトやシリアから鹵獲したT-54/55をアチザリット重装甲車両に改造していました。イスラエルとロシアには軍事的な交流はありませんでしたが、​T-54/55戦車を知り尽くしているロシアにとっては、写真や映像から分析して、戦闘装甲車への改造の実行可能性と実用性を側面から証明することは難しい事ではありませんでした。

​BTR-Tに改造

​改造にあたり戦車の要となる砲塔を取り除きます。その代わりに少し右側に小型の砲塔を設置。この砲塔はモジュラー式になっており、榴弾砲、12.7mm機関銃、30mm機関砲または対戦戦車ミサイルと作戦に合わせて5つの武装を取り付けることができます。砲塔別に発煙弾も装備できます。砲塔は操縦室内から遠隔操作もできるが砲手が、かつこの砲塔内に砲手が座って操作することもできます。

​車体は大幅に改造され、T-54/55戦車と比べ、十分な乗車空間と防護力を追加しています。​車台の上甲板は新たに取り付けられ、ついでに元の砲塔取り付け位置の大きな穴を封じ、小型ハッチを採用して兵士たちの出入りを容易にしています。​しかし、内部空間の増加はそこまではなく、T-54/55の乗員数は4名でしたが、BTR-Tの乗員数はドライバーと車長(兼砲手)の2人の他に兵士5人の計7人になります。

​BTR-Tは、チェチェン紛争での経験をもとに装甲防護を重点的に強化しており、車体前面にはKontakt-5の爆発反応装甲を取り付けることで、防護力を600mm装甲と同等になりました。​車体側面には多重空間装甲とゴム板を増加させ、​底面の装甲も強化され、地雷、IED(即席爆弾)への防御力を向上させています。燃料搭載量は増加され、行動距離はT-54/55の450kmから500kmに伸びています。​更にエアコンが完備されており、兵士に快適な環境を提供し、過酷な戦場でも兵士の士気を維持します。​重量は38.5トン、全長6.45メートル、幅3.27メートル、高さ2.4メートル、最大速度は整地で50km/h、オフロードで25km/h。

戦車並みの重装甲と十分な攻撃力をほこる​BTR-Tは90年代末に登場しましたが、経済的な問題や運搬能力の低さからあまり導入は進みませんでした。

BTR-Tは古くなったT-54/55を流用した歩兵戦闘車両です
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