アメリカ陸軍の装輪装甲車ファミリーである”ストライカー装甲車”。ストライカー旅団戦闘団の基幹を構成する車輛の一つであり、ミッション要件に合わせて様々なバリアントが開発されています。その中でも最新のモデルといえるのが指向性エネルギー機動短距離防空車両 「DE M-SHORAD」です。
米陸軍初の機動レーザー兵器
無人航空機システム(UAS)やドローン、ミサイル、ロケット弾、大砲、迫撃砲。これらの攻撃に対する一番有効な手段は対空ミサイルやCIWS、CRAM、機関銃よる迎撃ではありません。一番有効なのは指向性エネルギー・レーザー兵器です。レーザー兵器は電力をベースとするため、弾数や給弾を気にすることなく、兵站需要の削減を通じてシステムのライフサイクルコスト全体を削減しながら、銃弾やミサイルにはない、広いエンゲージメントによって陸軍の防空能力とミサイル防衛能力を向上させます。しかし、レーザー兵器はある程度の電力が必要になるため主に艦船や基地防衛用の設置型が主で、リスクが多い前線で運用できるレーザー兵器はありませんでした。そこで米陸軍と”米陸軍緊急能力及び重要技術部局(RCCTO)”は前線でも運用できるようレーザー兵器に機動性を持たせるべく、ストライカー装甲車にレーザー兵器を搭載することを検討。ノースロップ・グラマン社とレセイオン社の2社によって24カ月で開発されたのがDE M-SHORADであり、レーザーを使用する最初の機動戦闘アプリケーションです。
AFVクラブ 1/35 アメリカ陸軍 M1130 ストライカーコマンドビークル プラモデル FV35130
長距離レーザーとマイクロ波の2つのモード
DE M-SHORADにはバッテリー、電源、冷却システム、そして50kwを発電するガソリン発電機が搭載されており、これにより高出力のレーザー兵器の使用を可能にしています。このレーザーを浴びると内部のICチップやセンサーがショートし、ドローンは無効化され墜落、ミサイルは誘導機能が麻痺します。ロケット弾や榴弾砲、迫撃砲などは推進剤や爆薬が過熱され空中で起爆します。レーザー兵器には高出力レーザーと高出力マイクロ波と2つのモードがあり、高出力レーザーはレーザー面が狭いですが、射程が長いため、ミサイルや榴弾砲など長距離から放たれるターゲットに。マイクロ波は射程は短いですが、面が広いため、密集、大量に飛来するロケット弾やドローンの迎撃に適しています。
DE M-SHORADストライカーは現在、実戦を想定した評価試験を受けており、評価は上々です。2022年会計年度中に4つの小隊に配備を予定しています。
Source
https://www.army.mil/article/249239/army_advances_first_laser_weapon_through_combat_shoot_off