ロシア国防当局は、自国の「Pantsir-S1(パーンツィリ-S1)」防空システムに搭載されている30mm対空機関砲の欠陥を認める形で新しいモデル「パーンツィリ-SMDE」では、機関砲を全て排除し、完全な防空ミサイルキャリアとして使用する戦略へと転換した。
モスクワで開催されている軍事技術フォーラムイベント「Army 2024」でパーンツィリの最新モデル「パーンツィリ-SMDE」が公開された。パーンツィリ-S1には30mm対空機関砲と対空ミサイルの2つの対空兵器が搭載されているが、SMDEでは30mm対空機関砲が排除されており、対空兵器は全てミサイルに依存した、ミサイルベースの対空システムに変更されている。ミサイルもS1では射程1.2~20km、高度15kmの57E6Eミサイルを搭載していたが、SMDEでは射程0.5~7km、高度5kmのTKB-1055小型ミサイルに切り替えられている。射程は短くなったが、S1では12発の搭載数だった57E6Eミサイルに対し、対空砲が排除され、ミサイルが小型したことにより、SMDEでは48発のTKB-1055ミサイルを搭載している。
パーンツィリ-S1は短距離対空防御システムとしてロシア軍の最終防空網の一つして、基地などの拠点防御用に配備、モスクワのロシア国防省本部の屋上にも設置されている。長距離中距離防空システムのレーダーは捉えずらい小型の標的も検知でき、ドローンにも強いと言われている。実際、パーンツィリは対ドローンで成果を上げているが、それは12発の対空ミサイルがあるうちだけになる。30mm対空機関砲はドローンに対して全く効果がない事がウクライナの戦場で実証されている。機関砲はレーダーと連携し、自動で標的を追跡、照準が行われるが、反動による銃口上昇の問題があり、照準が定まらず、結果、ドローンを撃墜できずに攻撃をうけるか700発の砲弾を直ぐに撃ち尽くしてしまっていた。そのため、パーンツィリは現状、ミサイルを撃ち尽くしたら、30mm機関砲を使用することなく撤退していた。公開された最新モデルのSMDEから対空機関砲が排除されたのはある意味、欠陥を認めたことになる。
ウクライナのゲパルトの対空砲はドローンへの有効性を証明
それに対し、ドイツから供与されたウクライナ軍のゲパルト対空自走砲の35mm機関砲は高い精度と低い弾薬消費で、ドローンに対して効果を発揮している。1970年代に開発され、2010年代には現代の航空脅威に対抗できないとしてドイツ軍から全て退役していたが、改修されたレーダーと近接信管の砲弾により、現在最も脅威とされるドローンに対して有効性を証明している。