もはや地上兵器となったロシア海軍の対潜迫撃砲RBU-6000

もはや地上兵器となったロシア海軍の対潜迫撃砲RBU-6000

奇妙な形状をした自走ロケット砲システムがウクライナで戦うロシア軍に登場しました。この車両、本来、ロシア海軍の艦艇に搭載されるRBU-6000対潜迫撃砲を搭載しており、その名の通り、この兵器は本来、潜水艦を攻撃するために使用される兵器です。ウクライナの地上戦でRBU-6000の使用は昨年末から度々目撃されています。

ロケット弾を発射する戦闘車両。撮影場所は不明ですが、映像はロシア軍によってウクライナの戦線で撮影されたとされています。初めて見る奇妙な形状をした戦闘車両はT-80B戦車のシャーシに通常、地上戦では使用しないRBU-6000対潜迫撃砲を搭載した戦闘車両で、もちろん、ロシア軍が保有する正式な兵器ではなく、戦時中に開発、魔改造された特殊兵器です。見た目は自走多連装砲ロケットシステムといった感じですが、RBU-6000は一応、迫撃砲なので、自走迫撃砲の方が正しいのでしょうか。とはいえ、本来、対潜水艦戦に使用するRBU-6000を地上戦に使用するのは異例です。

RBU-6000対潜迫撃砲

RBU-6000対潜迫撃砲
mod russia

RBU-6000は、第2次世界大戦時にイギリスが開発したヘッジホッグ対潜迫撃砲を改良する形でソビエト連邦時代の1960年代に開発された対潜迫撃砲システム、「スメルチ-2」とも呼ばれています。対潜迫撃砲の一種で対潜というように潜水艦を迎撃するために開発されたもので、現在もロシア海軍が対潜兵器として運用しています。

RBU-6000は主に艦船のデッキに取り付けられる艦載兵器で12本のロケット発射用チューブを馬蹄形状に配置、爆雷を発射します。迫撃砲と名付けられていますが、艦の周囲数十、数百mに爆雷を投下するような兵器ではありません。爆雷はロケット弾になっており、最大射程は6000mを有し、これは地上兵器で使用されるロケット弾と遜色ありません。最短射程は350mです。

水中の潜水艦を検知すると火器管制システムによってコントロールされたRBU-6000は水中の標的に対し、最大12発の無誘導爆雷を発射します。1つの発射機には72~96発の爆雷が装填でき、それらは自動装填機能によって続けて発射することが可能です。RGB-60爆雷の場合、爆弾質量は113.6kgで飛行速度は最大毎秒300m。最大ダメージ範囲は5230㎡に達します。射程4000mの90R爆雷には接触信管、90R1は所定の距離に達する誘導非接触信管を搭載しています。

とはいえ、これはあくまで艦載・対潜兵器に搭載していた場合の機能で、今回のような地上車両用に魔改造されたRBU-6000で機能がそのまま使えるかは疑問です。少なくとも自動装填装置、火器管制システムと連携はされておらず、装填、照準は手動と思われます。対地攻撃用に爆雷ではなく、無誘導ロケット弾も発射できるので、今回使用されているのは、通常のロケット弾かもしれません。
RBU-6000が搭載された車両はT-80戦車だけではなく、ウラルトラック、MT-LB牽引装甲車に搭載され運用されているのが確認されています。

枯渇する地上兵器

ロシア軍が海軍の艦載兵器を地上戦に投入するのはRBU-6000が初めてではありません。昨年3月には25mm 2M-3艦載機関砲を搭載したMT-LB牽引装甲車が確認されています。25mm 2M-3は海軍の小型戦闘艇、潜水艦に搭載するために第二次世界大戦直後の1945年に開発された二連装艦載機関砲です。強力な25x218mm弾を使用、発射速度は毎分270~300発。25mm弾の射程は最大2.5 kmで、高度は1.7 kmに達します。生産自体は1980年代に終了。既にロシア海軍の前線からは退いているようで退役した兵器です。しかし、これを倉庫から呼び戻して再利用しました。艦載兵器を投入してきたことからロシア軍の地上兵器が枯渇していると言われていました。25mm機関砲は退役した兵器ですが、RBU-6000はまだ現役の兵器です。さすがに現役の艦艇から搭載済みの物を外して投入したとは思えませんが、ロシア軍の兵器不足が垣間見えます。ロシア陸軍、空軍の損耗が多い中、黒海への乗り入れが制限されている現状、海軍の損耗は黒海艦隊に限定されており、海軍兵器は陸空に比べ、戦力に余力があり、今後も艦載兵器の投入は続くかもしれません。

もはや地上兵器となったロシア海軍の対潜迫撃砲RBU-6000
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