ウクライナの隣国ポーランドはウクライナへの追加支援としてドローン、戦闘装甲車に自走砲や自走ロケット砲に加え、236両ものT-72戦車を送りました。
ポーランドの情報無線局(IAR)の報告によると、ポーランドはソ連時代の数百両の歩兵戦闘車、自走砲、自走式ロケット、そして236両ものT-72戦車をウクライナに送りました。ポーランドのこれまでの支援を合わせると、その規模は70億ズウォティ、日本円で2000億円相当の武器をウクライナへの支援として送ったことになります。これは米国に次ぐ規模です。米国は世界最大の経済大国ですが、ポーランドのGDPは世界で23位(日本の9分の1の規模)であり、その規模からすれば支援額は突出しています。しかし、236両もの戦車をウクライナに提供してしまって、ポーランドの戦車戦力は問題ないのでしょうか。
主力戦車をエイブラムスM1A2に切り替えるポーランド陸軍
冷戦時、東側陣営の最前線として西側と対峙していたポーランドはソ連からT-72主力戦車のライセンス提供を受けて、ポーランド版T-72M戦車を生産、その数は505両にも上りました。現在でも350両ほどが残っているとされ、更にT-72Mの派生型であるPT-91 Twardy(トファルディ)を開発。1995年から配備が始まり、232両を保有しています。そして、1999年にNATOに加盟したことで、2002年にはドイツからNATO基準である128両のレオパルト2A4戦車を入手。2013年にはさらに119輌のA4とA5のレオパルトが追加。そして、2020年にはレオパルト2A4の近代化バージョンであるレオパルト2PLを12両を取得しており、約250両のレオパルト2を保有。350両のT-72M、232両のPT-91を合わせるとその数は830両にも上り、ポーランドはNATOヨーロッパ最大の戦車大国です。今回提供した236両は戦車戦力の28%に当たりますが、戦力規模から提供できない数ではありません。
また、ポーランドは古くなったT-72Mの更新を決めており、既に米国とエイブラムスM1A2主力戦車の最新バージョンSEPv3、約250両購入する契約を締結してます。納入されるエイブラムスM1A2は米軍の在庫を改良するため、通常より納入までのリードタイムが短く、早ければ2022年後半からポーランド軍へ納入が始まり、2026年までに全車納入されます。なので、ポーランド軍にとってはそこまで致命的ではなく、提供する余力があることになります。失った分は、イギリス軍のチャレンジャー2戦車が駐留するなどして穴埋めを行います。
NATO各国はウクライナへの支援として多くの重火器を提供。チェコとポーランドはウクライナ軍も扱いになれたソ連時代の戦車T-72を数多く提供しました。しかし、これらの支援により、両国の戦車戦力は大きく弱体化。ロシアの脅威が無くなって[…]
ソ連系の戦車はウクライナ軍も使い慣れており、戦車兵は特に訓練期間必要なく乗りこなせますが、これだけの数となると戦車兵も足りないと思われ、ただでさえ、ウクライナ軍は鹵獲したロシア軍の戦車によって、戦車部隊が増強されているとされています。全てを戦力するには数か月掛かるかもしれません。