戦車不足に悩むロシア軍がT-54/55主力戦車を倉庫から運び出されるのが目撃され、とうとう、戦後最初に開発された第一世代主力戦車がウクライナに投入されるのではと噂されています。
Russia running out of obsolete T-62M, so what do they do? They send in the even more obsolete T-55. #Ukraine pic.twitter.com/SrEG2wCQcJ
— (((Tendar))) (@Tendar) March 22, 2023
T-54/55戦車は戦後間もない1947年にソ連によって開発された主力戦車で、戦後最初の主力戦車、いわゆる第一世代戦車です。既にロシア軍からは退いた車両ですが、現在、SNS上には倉庫から運び出されたとされるT-54/55戦車が列車に乗せられ輸送される動画が多数投稿されています。この戦車は極東、日本海に面するプリモルスキー地方のアルセーニエフという町にある戦車保管庫から運び出されたものとされます。CITの調べによればアルセーニエフにはT-80BVとT-72B、かなりの量のT-62、そして、T-54/55が保管されていたとされます。2022年6月から11月の間に191両の車両が運び出されましたが、そのほとんどがT-62戦車になり、列車に乗せられ、西に向かうのが確認されています。それから間もなく、T-62戦車はウクライナに投入されました。つまり、この輸送されるT-54/55戦車も保管対象から外され、戦線に復帰するものと思われます。
T-54/55戦車とは
T-54戦車は戦後間もない1947年にソ連が開発した主力戦車で、T-55はT-54の改良版として1958年に登場した車両になりますが、ベースがほぼ同じであるため”T-54/55”と表記されます。第二次大戦で世界一の戦車大国となったソ連ですが、大戦末期にはT-34、T-44の85mm砲は既に火力不足と化していました。そこでT-54にはD-10T 100mmライフル砲を搭載し、大幅に火力を向上。装甲も強化され、車体重量は4トンも増加しましたが、エンジンも強化され、580馬力のエンジンは最大速度50km/hを誇り、走行距離は450kmに伸びます。NBC(化学・生物・核)防御システムが標準装備され、12.7mm対空機銃が追加、砲弾数も増加し、そのスペックから登場した当時は第一世代戦車としては最強と言われました。10万輌以上が製造され、一部の国では現在も現役で活躍。戦車版のAK-47と言われており、最近でもアフリカ、シリア、アフガニスタンの紛争に登場しています。
ロシア軍は何両のT-54/T-55を持っている
ソ連崩壊時に3000両のT-54/55がロシア軍に継承されたとされ、1995年には412両、2000年には20両が現役で運用されていました。その後、T-54/55は半世紀以上の運用を経てようやく退役、保管対象になります。2000年代には1000両以上が保管されていたとされていますが、2010年代には500両未満に減っています。そもそも、T-54/55戦車が開発されてから、ソ連は第二世代戦車のT-62、T-64、T-72戦車、第三世代のT-80、T-90戦車を開発。そして、ロシアになって初めて開発されたT-14主力戦車も登場するなか、T-54/55は当の昔に無用の長物になっていました。保管されていた車両もそのほとんどが廃棄されたとされ、残っているのは100両に満たないとの情報もあります。
戦場に戻すにはオーバーホールはもちろん、現代の戦場で使用するには近代化改修が必要なので、ウクライナに投入されるのは数か月先かもしれません。近代化したとしてもT-54/55戦車の100mmライフル砲はウクライナに提供されるチャレンジャー2、M1A2エイブラムスの装甲を焦げ付かせることしかできないことは実戦で立証されています。
ちなみにウクライナ軍は既にT-55戦車を投入していますが、これはスロベニアから提供されたM-55S戦車になり、主砲がイギリス製の105mmライフル砲に換装され、近代的な射撃管制装置を追加、装甲も強化され、第二世代戦車と同等の能力を持っています。
スロベニアのロベルト・ゴロブ首相とドイツのオラフ・ショルツ首相は19日、40台のドイツの軍用トラックと引き換えにスロベニアのM-55S戦車28両をウクライナに譲渡することで合意に達しました。M-55Sはソ連製のT-55戦車を近代化[…]