ウクライナ軍に提供される戦車の半数以上はT-72系であり、ウクライナ軍の主力戦車は今後もT-72がベースです

ウクライナ軍に提供される戦車の半数以上はT-72系であり、ウクライナ軍の主力戦車は今後もT-72がベースです
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NATOは4月28日にNATO加盟国がウクライナに引き渡した装甲車両は1550両、戦車は230両にのぼると述べ、各国が提供を約束したうちの98%が引き渡されたことになると発表しました。提供はまだ現在進行形で進んでおり、今後、予定されているウクライナ軍の反攻作戦のために続々と兵器が集まっています。その中でも地上戦の主役である戦車、特に今回初めて提供される西側製戦車に注目が集まっていますが、反撃の主役になるのはロシアの侵攻が始まった当初から変わらず、ソ連製のT-72戦車、またはそれをベースとした車体です。

T-72戦車とは

T-72戦車

T-72は1971年にソビエト連邦が開発した2.5世代戦車です。モデルとしては古いですが、未だに前線を張れる優良な戦車です。主砲には現在のロシア軍の主力戦車の標準口径である125mm滑腔砲を搭載。装弾筒付翼安定徹甲弾 (APFSDS) 、成形炸薬弾 (HEAT) 、榴弾 (HEF) 対戦車ミサイルなど、さまざまな弾薬を発射できます。自動装填装置を採用しており、乗員は車長、操縦手、砲手の3名です。副武装には同軸の7.62mm機銃、ハッチには対空用に12.7mm機銃を搭載しています。車体重量は41.5トン~と軽く、最大速度60km/h、走行距離450kmと機動性も高い車両です。後継のT-90戦車はT-72をベースにしており、その完成度の高さが伺えます。ロシア軍はT-72を何度も近代化改修を行い、最新のT-72B3やB4は第三世代戦車と同等の能力を持っているとされ、現在もロシア軍の戦車部隊の主力を担っています。T-72は冷戦時真っただ中の主力戦車だったこともあり、東側各国にライセンス付与され、延べ25,000両が生産、旧東側のNATO加盟国でもウクライナ侵攻前まで主力戦車として配備されていましたが、ウクライナへの支援のため、その多くがウクライナに提供されています。

T-72M × 260両(ポーランド)

今回、国別の車両で最も多く提供されているのがポーランドのT-72M戦車です。冷戦時、西側の最前線であったポーランドはソ連から付与されたライセンスのもと、T-72Mとして、延べ505両を生産、輸出しています。ロシアによる侵攻前、ポーランド軍は358輌のT-72Mを所有していましたが、ロシアの侵攻が始まるとT-72Mをウクライナに提供します。その数は延べ260両にものぼり、その数は今後も増える可能性があります

PT-91 Twardy ×30(ポーランド)

ポーランドT-72M以外にもT-72Mの改良型である30両のPT-91 Twardy(トファルディ)も提供しています。PT-91は1990年初頭にT-72M1のアップグレード版として開発。射撃統制システム 、爆発反応装甲、エンジン、トランスミッション、自動装填装置など、国産パーツを用いて改良されます。1995年から配備が始まり、232両を保有していました。

ポーランドはT-72Mとその改良型PT-91 Twardyを合わせて290両もの車両を提供。それ以外にも14両のドイツ製のレオパルト2A4も提供するので、その数は300両以上です。これはポーランド軍が所有する戦車の3分の1以上を占めますが、ポーランドは新たに250両のアメリカのM1A2 エイブラムス、1000両の韓国のK2ブラックパンサーの調達が決定しており、数年後にこの損失分は補填され、戦車戦力は一新されます。

T-72M1 × 50(チェコ)

mod Czech

ポーランドと同様に冷戦時の最前線だったチェコスロバキアがソ連のライセンス提供を受けて生産したモデルで、M1は砲塔前面に複合装甲が追加され、防護力が上がっています。チェコはウクライナに送られる戦車のメンテナンス、改良拠点になっており、戦場での強度に耐えられるように改修が行われています。

かつて、一緒だったスロバキアも西側製戦車の提供を条件に30両のT-72をウクライナに送る用意がある旨を今年1月に述べています。こちらはまだ未定です。

T-72B × 90(チェコ)

T-72Bは、1980年代に登場したT-72Aのアップグレードバージョンです。射撃統制システム、エンジン及び装甲が改善され、、レーザー誘導型対戦車ミサイル発射機能も備えています。ロシア軍のT-72戦車の多くはこれをベースに近代化したT-72B2、T-72B3になります。チェコはアメリカとオランダの支援を受け、熱画像機能、暗視システム、強化された装甲保護を搭載する近代化改修を行った車両をウクライナに提供します。

T-72B × 20(モロッコ)

モロッコがウクライナにT-72戦車提供!アフリカとしては初の支援
Morocco Army

アフリカからの初のウクライナへの軍事支援として動いたのがモロッコであり、20両のT-72Bを提供しました。車両は最初、チェコに送られ、そこで改修を受けてウクライナに送られました。

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M-84 × 46(スロベニア)

M-84はソ連からのライセンス提供のもと、旧ユーゴスラビアで生産されたT-72です。スロベニアは1992年のユーゴスラビアからの独立時に54両のM-84を引き継いでいました。スロベニアはこれ以外にも28両のM-55Sをウクライナに送っています。M-55Sはソ連製のT-55を近代化した戦車でNATO基準の100mmライフル砲、第三世代戦車と同等の射撃管制装置、電子機器を搭載しています。小国のスロベニアはウクライナへの支援と引き換えにドイツからレオパルト2戦車、マルダー歩兵戦闘車、フクス装甲兵員輸送車といった近代的な車両を安価に受け取ることができます。

ウクライナはT-72系だけで約500両を軍事支援で受け取ることになります。更に、これとは別にウクライナ軍にはロシア軍から鹵獲した300両以上のT-72があり、それと合わせると実に800両以上のT-72を手に入れた、手に入れるわけです。

ウクライナ軍に提供される戦車の半数以上はT-72系であり、ウクライナ軍の主力戦車は今後もT-72がベースです
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