ポーランド国防省（MON）は、アメリカのエイブラムスM1A2主力戦車の最新バージョンSEPv3、約250輌をアメリカから購入する計画を立てています。
ポーランドのメディアのGazeta.plによると、MONは公式な声明はだしていませんが、エイブラムスM1A2の調達はかねてから噂されており、軍の契約に近い2つの情報筋から、既に契約条件について話が進められており、早ければ初秋には契約調印式が行われるかもしれないと報じています。契約内容はアメリカ陸軍の主力戦車でエイブラムスM1A2のシステム拡張バージョンの最新版であるM1A2 SEPv3を約250輌、訓練車両12両。そして、回収戦車や架橋戦車、さらに、シミュレーター、弾薬、部品などが含まれ、その契約金額は29～50億ドルと巨額契約になります。
T-72Mの代わり
NATOの一員であるポーランド軍は隣国のドイツ軍から2002年に128輌のレオパルト2A4戦車を入手。2013年にはさらに119輌のA4とA5のレオパルトが追加。そして、2020年にはレオパルト2A4の近代化バージョンであるレオパルト2PLを12輌を取得しており、ポーランド軍の前線の主力戦車は約250輌のレオパルト2シリーズが担っています。しかし、このレオパルト2よりも多数、所有しているのが冷戦下のソ連時代に配備されたT-72Mです。
冷戦時、西側の最前線であったポーランドではソ連から付与されたライセンスのもと、T-72Mとして、延べ505両を生産、輸出しました。現在、ポーランド軍には358輌のT-72Mとその派生型が残っています。さらに、このT-72Mを発展させた、国産のPT-91 Twardy（トファルディ）を開発。1995年から配備が始まり、232輌が配備されています。つまり、ポーランド軍にはレオパルト2の倍以上となる約600輌のT-72M系戦車が未だ配備されています。ポーランド軍はソ連時代の設計がベースで旧式化した、これらのうち250輌をM1A2 SEPv3に更新したいと考えているようです。
エイブラムスM1A2 SEPv3とは
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— 3-8 CAV (Warhorse) (@3rd8cav) August 18, 2020
エイブラムスM1A2 SEPv3は、2000年に生産を開始したシステム拡張パッケージ SEPの3番目のモデルです。2003年のイラク戦争で確認されたエイブラムスM1A2のスペース、重量、電力の問題の多くを修正し、今後のエイブラムスの段階的なアップグレードの基礎となるものです。アップグレードの内容は射撃管制コンピューターシステム、燃料消費量を削減する補助エンジン、車両健全性管理システムが搭載され、装甲強化に即席爆発保護装置が追加され生存性が向上しています。これまで生産された中で最も信頼性の高いエイブラムス戦車であり、メンテナンスおよび供給システムが効率化し、陸軍の後方支援の負担を軽減します。米陸軍でも2020年から配備が始まったばかりの最新のモデルです。ポーランドはロシアの脅威に対抗すべく、米軍との協力関係を深めたいと考えており、近年も積極的に共同演習を行っており、装備の共通化を図ったものと思われます。
レオパルト2A4とA5も旧式化しており、配備されればM1A2 SEPv3が前線の戦車部隊の主力を担うでしょう。
3つの異なる戦車
250輌をM1A2 SEPv3に更新しても、約350輌のT-72Mが残ります。実は358輌のT-72Mの内、230輌が2019年から2025年にかけて近代化する契約が2019年に締結されています。これには追加で88輌を近代化するオプション契約も結ばれており、最大318輌が近代化されます。232輌ある、PT-91も2016年に数十台が軽微な近代化を行っています。残りの近代化されていない両戦車がM1A2 SEPv3に更新されるものと思われます。つまり、T-72M系戦車はポーランド軍の大部分を占めます。そして、ドイツのレオパルト2、そして、新たにアメリカのエイブラムスM1A2が加われば、異なる3つの戦車を運用することなります。この3つの戦車に共通性は少なく、例えばレオパルト2とT-72Mはディーゼルエンジンですが、エイブラムスM1A2はガスタービンです。このように補給やメンテナンスが複雑化するのではという懸念があります。現地ではレオパルトの最新版であるレオパルト2A7+を購入すべきという声もあります。